地域再生で語られがちな「絆」に漂う薄ら寒さ B級グルメやゆるキャラでは活性化しない

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飯田:経済学やった人にはお馴染みの機会費用がかかっている。職員を丸1日着ぐるみの中入れておく。公務員として時給換算したら実はすごくおカネがかかっているのに、表面上はコストがかからないように見えますが、実はいちばんおカネがかかっているところを無視している。

常見:たいていは得していません。2年ほど前に大阪でゆるキャラのリストラが行われたことがありましたが、英断だと思いました。そんなにたくさんあっても、認知されない。

飯田:そんなことで職員使っているヒマがあったなら、職員に隣町のコンビニなり工場なりで働かせて時給を稼いでもらったほうが(笑)。

常見:外貨獲得みたいな(笑)。政策の基本なんですけど、それはいつ、何に、どれくらい効くのかという視点が大事です。パッケージ化したサービスで課題を解決しようとするのもどうかと思います。

飯田さんは地域再生について今の段階だとアイデアをどんどん出していったほうがいいという考えですね。

「絆」って、どう測定するの?

飯田:新しいことをやったら10のうち9.9は失敗だと思うんですよ。新しいことがそんなに簡単にできているんだったら、日本はこんなに苦しんでいない。一方で行政って、失敗しちゃいけない原則があり、必ず達成できる目標を置く。絆が深まったとか、地域の理解が深まったとか。

常見:「絆が深まった」って気持ち悪いですね。どう測定するんでしょうか。

飯田:もうちょっと数字が必要ですって言われたら、このイベントで何万人集まりました、って。地域のおカネで大御所の演歌歌手を呼んで、歌謡ショーでもやろうものなら、そりゃ人間は集まりますよ。

常見:ゴジラ対モスラみたいな。

飯田:都内の中心部だと税収はすごいあるのに住人いないので、カネが余ってしょうがないというケースもありますが、それ以上にカネがないところでそんなことやってどうすると。無理に人を集めたとしても地域にとって何もいいことがない。せいぜいゴミ処理と交通整理にコストがかかるくらい。

常見:やっぱり地域におカネが毎年落ちて潤うとか、この町にこれがあるよねというのが良いんですが、なかなかそういうのがない。

飯田:広島県呉市が屋台の規制を緩くしたんですよ。屋台は少ない予算でも起業できる。ITベンチャーが思い浮かぶかもしれませんが、日本でも海外でも起業の定番は飲食店なんですね。「起業とは飲食店を開業することだ」「起業とは2坪の小さなクラフトショップを開くことだ」というふうに考えると、全国のいろんな街で十分に可能な方向性だと感じられませんか? 時給換算するとかなり低くても、ネットやりながら遊びながらときおり客対応しているだけならそれでもいいという人はいるんじゃないかな。そういう自営業型起業は経済にとっての重要な下支えになる。

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