シェールガス革命がもたらした米国の独走 日本向けLNG価格は下がるか

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 中期的なLNG需給は再びタイトに

日本が原発を再稼働するのか否か。短期的には、これが極東マーケットに与える最大の影響要因だが、現状では、この見通しはきわめて不透明だ。

世界の貿易量から見ても非常に大きな日本の緊急需要を滞りなく調達することができたのは、業界関係者の不断の努力の結果である。また、中東およびアトランティック方面で余剰が生じていたことは幸運であった。

では中長期的にはどうなるのかという視点で、LNG需給を見てみよう。Bullケース(高需要かつ低供給で強含む予想)の場合、14年から16年にかけて需給がタイト化すると予測される。

これは継続する日本の原発代替需要とアジアの需要の伸びに対して、現在開発中のプロジェクトからの供給開始が遅延するとの予測に基づく。現状の諸要因を勘案すると、中期的にはBullケースになる可能性が高いのではないかと思う。

LNGを論ずるのに、もう1つ忘れてはならないのはプロジェクトのコストだ。ガスの資源量の側面だけを見ると、LNG業界はIEA(国際エネルギー機関)が昨年発表したように「ガスの黄金時代」を迎えようとしている。

他方で、安価に開発ができるいわゆる「イージーガス」はすでにわずかとなっている。新たに発見されている大規模ガス田は、インフラを伴わない非在来型、深海、もしくは極地であり、上流の開発コストは非常に高価なものとなる。

また、現在開発中のプロジェクトも、高油価によるコスト増と人件費の高騰によるプロジェクトの経済性の悪化に直面している。高い原油価格を是としてプロジェクト採算を見込むLNG業界内では、「メガプロジェクト病」(同一設計の液化施設を建設しているにもかかわらず、年を追って建設費が大幅に増大するような現象)なる言葉もささやかれている。

この原因は複合的である。だが、分業、外注化によって、オペレーターのエンジニアリング部門は弱体化、コスト意識も希薄化傾向だ。これらの点は最も懸念されるポイントではないだろうか。

LNG生産者側の主張は、LNGの継続的かつ安定的な供給のためにはコストがかかり、これはプロジェクトの全期間を通じて保証されなければならないというものである。この主張は普遍的であるが、一方で、生産者側として健全なマーケットを長期に維持するためのコスト削減努力を忘れてはなるまい。

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