日本で働かせる前提で子供を育てていいのか インドやアフリカをよく知る金融家の目線

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加藤:お爺様の建てられた学校はアフリカとインドに多くあるそうですが、生徒たちにはどう育ってほしいとお考えでしょうか?

貧困の人々を救うには生活水準の引き上げが重要

メグラジュ:理想論かつ単純ですが、責任感のある大人に育ってほしいです。たとえば、インドの小学校には地方からやってくる生徒がごまんといますが、彼らが職を得るようになれば、経済は好転するでしょう。ホワイトカラーの仕事でも、新たな形の仕事でも、家族のために稼げば社会における家族の地位が変わりますから。貧困にある人々を救うためには、その家族の生活水準を引き上げることがとても重要なのです。

教育を受けた子どもが起業して成功すれば、一家の地位が向上するだけでなく、雇用を生んで生活を支えられるようになる

加藤:子どもの教育が一家のこれからを左右するのですね。

メグラジュ:ビジネスマン向けのセミナーなどでも「企業が生き残り、成長するには何が必要か?」という質問をよく受けますが、その際に基本的な管理者教育、つまりビジネスの基礎的な教育を事業者に受けさせることが必要だと私は答えています。教育を受けた子どもが起業して成功すれば、その一家の地位が向上するだけでなく、多くの人たちに雇用を生んで生活を支えられるようになります。

ドミノ倒しのような連鎖反応で、私たち一族も大きな変化を遂げました。だから、私たちは起業家育成の必要性を確信しているのです。ビジネスや教育の推進は、小規模の企業経営者たち、そして企業の根づいた地域社会を助けます。これは小学校で教わる教科の勉強とはまったく異なる、教育が持つテーマのひとつですね。

加藤:教育は、自分自身だけでなく家族を変え、社会全体をも変えるものだということですね。

メグラジュ:まさしくそうです。

加藤:ビジネス運営のスキルについての教育も、非常にすばらしい活動ですね。この種のスキルは、子どもが将来社会に出た時に決定的に必要なスキルであり、社会的な影響も大きい能力であるように思います。

メグラジュ:小さい頃に社会に触れて、特にビジネスに触れることができれば、起業家への見方が変わります。日本社会には、比較的起業家に対して社会的な尊敬が乏しい。そこが米国やインド社会との違いです。インドも米国も、人々は起業家に大きな敬意をもって接しています。

一方、日本では大企業で日本的なキャリアを積んでいかなければ家族が迷惑を被るし、そのキャリア形成が絶対的な正解だと考える日本の上流階級がまだまだ多い。偏差値の高い大学を出て大企業に、というパスですね。しかし、今の日本社会が、社会課題を解決するための起業家を必要としているのは間違いありません。それは社会にとって良い兆候です。日本の子どもに起業家育成を行えば、起業家に対する受け止め方が変わり、「現状維持=安心」というおかしなリスク評価の見方が変わるでしょう。

(構成:田中 利知、撮影:今井 康一)

加藤エルテス 聡志 RISU Japan共同創業者

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かとうえるてす さとし / Satoshi Erdos Kato

東京大学卒業。コンサルティングファーム(McKinsey & Company)・米系製薬会社等を経て、2014年にRISU Japan (risu-japan.com)を創業。 著書「日本製造業の戦略」(ダイヤモンド社・共著)、編集協力に「日本の未来について話そう」(小学館)、「Reimagining Japan」 (Biz Media LLC) など 講演 TEDxTokyo Salon 教育の未来とデータサイエンス、など

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