「利上げ期待」で上昇した米国株の向かう先 注目されるイエレン議長の利上げへの言及

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今週末にはイエレン議長の講演が予定されており、利上げへの言及に注目だ。今回も慎重な姿勢を見せるようだと、利上げ期待が一気にしぼみ、ドル安が進む可能性がある。利上げを織り込む形で上昇した米国株が、今度は利上げ先送り観測で下落することも十分にありうる。

近年の米国の利上げと米国株の関係を見ると、利上げ完了となった時点で株価がピークを付ける傾向がある。最後の利上げがいつであるかは、かなり後にならないとわからない。ただし、株価が下落に転じれば、FRBは利上げを行うことはできず、そこが結果的に株価のピークだったということになる。今回の利上げは昨年12月に実施したばかりであり、これで利上げ打ち止めになることはないだろう。年内に2回程度の利上げが実施されるとして、その時期は6月ないしは7月と12月が妥当なところであろう。年末に利上げが打ち止めになれば、その時点が株価のピークだったということが、後にわかるだろう。

次の高値は2019年第2四半期か

米国株はきわめて長期にわたって上昇基調が続いているが、この基調はFRBの賢明な政策により、今後も株価上昇が続く可能性は十分にある。ダウ平均株価の過去の動きをみると、非常にわかりやすいリズムで上昇基調が続いてきたことが確認できる。1981年以降の四半期末ごとの株価パフォーマンスを見ると、上昇期間と上昇率において、2つのパターンが確認できる。つまり、平均で14四半期上昇し、上昇率が平均43%のパターンと、上昇期間が22四半期で上昇率が平均149%のパターンである。

また、四半期ベースで130%を大きく超える上昇となったあとの次の2回の上昇期間では、43%程度の小幅な上昇率にとどまっている。このペースの上昇パターンを、過去35年間で2度経験している。これらから想定される、米国株の次の高値は2019年第2四半期あたりになる。また上昇率は43%に達すると計算され、その時点のダウ平均株価は2万3500ドル程度にまで上昇すると試算できる。

これはあくまで過去の株価上昇のリズムを当てはめただけである。それでも、低金利を背景に投資先に苦慮する世界の投資マネーが、ドル安を背景に米国に再度集まる可能性は否定できない。年内は米大統領選挙などの不透明要因もあり、上下に変動する可能性があるものの、長期的にはドル安を背景に、米国株は上昇基調が続く可能性がある。いまの市場における最大のリスクは、「円高、ドル高、欧州通貨・資源国・新興国通貨安」である。米金融当局には、このような事態にならないように、慎重な対応をお願いしたいところである。

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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