藤野英人氏が見たクックパッド「お家騒動」 少数株主としてガバナンスのあり方を問う

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――創業者が上場した自分の会社とどのようにかかわるのか、は難しい問題。

上場させるということは、自分の子を社会人にしたようなものなのですが、日本の会社においては、創業経営者のあり方はまだまだナイーブ。

日本には、未上場という実体をもった上場会社はたくさんあります。今回のように、50%に近い株を持っていれば、ほとんど会社を支配していることと同じ。オーナー経営者が天皇に近い絶対的な状態ですよね。それでもIPOできてしまう。

上場していて株式が公開されているといいながら、ガバナンスのあり方は非上場に近いという会社はとても多い。この状態を解消するには、上場の条件として個人の支配株主の比率を20%以内に押さえることを制度化するなどが考えられるでしょう。

今回の件はポジティブな出来事

――指名委員会等設置会社という中立性の高い統治形態を採用していたことも、会社の実態とはちぐはぐだったのではないかという指摘もある。

この統治形態のあり方も建て付けとしてよいと考えていましたが、クックパッドのような会社には合わなかったのかもしれません。今後もコーポレートガバナンスがきちんと行われる会社かというと、そうは見えなかった。指名委員会等設置会社にしていた理由は分からないが、佐野氏のオーナー会社であるという実態を考慮して、逆に客観的な組織を作って信頼性を得たいという考えも、あったのではないでしょうか。

しかし、東芝のような大きな会社で、株主にも多様性があれば、指名委員会等設置会社はとても効果的だと思う。今回のような話は、今後大企業でもさらに起きてくる。現場や、専門家の間でも議論が深まっているし、社外取締役を増やすことには大きな意義があると思います。

社外取締役だった岩倉正和弁護士が、定時株主総会招集通知に補足意見を書いて、一連の経緯を明らかにしたこともよかった。今回の件については、色々な批判や意見もありますが、私個人としては、非常にポジティブなことだと考えています。クックパッドだけでなく、大塚家具やセブンイレブンで起きたことも含めて、日本にコーポレートガバナンスを定着させ、前進させるための出来事といえるでしょう。

関田 真也 東洋経済オンライン編集部

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せきた しんや / Shinya Sekita

慶應義塾大学法学部法律学科卒、一橋大学法科大学院修了。2015年より東洋経済オンライン編集部。2018年弁護士登録(東京弁護士会)

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