TPP法案、米議会での年内採決が絶望的なワケ カギ握るクリントン候補の態度が微妙

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クリントン氏はTPPについて表向き反対の姿勢を表明してきた。しかし一部識者の間では、国家の安全保障上の理由、すなわち台頭する中国を牽制するために、本音ではその実現を望んでいるとの見方もある。

そのため彼女が大統領選に勝ち、レームダック期間中にTPP法案が採決されれば、彼女は批判を受けずに望むものを手に入れることができる──。そうした見方もささやかれていたのだ。しかし、今となってはそれは単なる希望的観測だったといわざるをえない。

 彼女が、労働組合などにした、TPPに反対し続けるというすべての約束はどうなるのか。彼女は、2018年の中間選挙で議席を失うことに繋がりうるものに投票するよう、民主党員をどうやって説得するのだろうか。

この点について政府関係者の1人は「有権者は2年間で、そんなことは忘れるよ」と述べている。

だが、選挙公約の中には、候補者が最低でも実現に努めるか、その結果と向き合わねばならないものも存在する。今回の大統領選は1936年以来で初めて、通商問題が主要な論点となっている。共和党の候補者指名争いでドナルド・トランプ氏が躍進した背景には、同氏がTPPに反対した点があったのだ。

マコーネル氏の「夢物語」

マコーネル氏は「貿易促進権限は6年間あるから、次期大統領は協定をまとめることが可能な権限を持ったままだ」と主張。TPPを早期に実現しようとしたオバマ氏の姿勢は「単なる見えだ」と批判した。

ではオバマ氏に替わる次期大統領が、TPPの熱心な反対者たちを口説き、譲歩を導き出すことができるのか。その可能性は極めて低いはずである。

 TPPの承認は不可能ではないが、日ごとに難しくなっているのだ。

(週刊東洋経済5月28日号)

 

 


 

リチャード・カッツ 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Richard Katz

カーネギーカウンシルのシニアフェロー。フォーリン・アフェアーズ、フィナンシャル・タイムズなどにも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。目下、日本の中小企業の生産性向上に関する書籍を執筆中。

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