ドラッカーも語らない、すごい不合理の解決法 新世代リーダー 西條剛央 「ふんばろう東日本」代表

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ドラッカーですら部分的にしか語っていない

例えば、家電を被災地に送るプロジェクトでは量販店からの調達を計画する私に対して「被災地の店から調達すべき」という批判が起こりました。

しかし、「目的」はあくまでも「多数の被災者を支援すること」です。そのため、割高な被災地の店舗から調達するのは正しい方法ではないと判断しました。批判者に対しても「代案を出せなかったので」と断りを入れました。

――ビジネスの世界でリーダーが注意すべきことは?

まずは、特に経営の分野では原理原則まで下りて考えてこなかった、ということを認識する必要があります。

経営の根本的な問題を提起してきたとされるドラッカーでさえ、その問題提起は領域が限定されています。「組織とは何か」を考えたけれども「価値とは何か」については部分的にしか語っておらず、「方法とは何か」については言及していません。

リーダーは何よりも、あたり前のやり方に沿った方法をとることが大切です。生物の大原則は「生きたい」という願望があるということです。批判されたり、罵倒されたりすると死にたくなるし、モチベーションも上がらない。大事なのは、褒めることです。

私は「抱えてから揺さぶる」ということを提唱しています。批判するときも、まずは「いつもありがとう」「いつもお世話になっています」と抱える、つまり前置きをするのです。そのうえで、「これについては、もう少しこうしたほうがいいのではないか」と揺さぶるわけです。そうすると批判に対する耳の傾け方は、大きく変わります。

忙しくて切羽詰まっていると実行できないときもあるのですが、いい組織はお互いの価値を認める組織です。否定し合う組織は消耗してしまいます。

その人の関心がないところに放り込むことも、モチベーションを低下させます。日本の企業では、どこの部署に行きたいんだと希望を聞いておきながら、その結果とは違う場所に配置するということが往々にしてありますよね。そうすると、働く動機づけができないので、嫌々やる、次の異動までの我慢だと思いしぶしぶやる、という結果になってしまいます。

自分の方向性と重なっていないことをやると、人間は消耗します。こういった基本原則に沿う当たり前のことをやっていない組織が多すぎます。原理原則から外れると、水を汲み上げるためにポンプが必要になる。つまり、高い給与やボーナスなどがないと、モチベーションの上昇につながりません。

すでに医療の分野では「構造構成主義」の論文が200本以上書かれており、多くの場で実践されています。医療の現場では、患者の治療をめぐって医師、看護師、薬剤師、理学療法士などさまざまな立場から信念対立が発生しやすい。方法の原理の「目的」が「患者の命を救うこと」ですから、意見の対立という問題を無視できないのです。

経営の世界でも、誰も悪くないのに意見が対立することがあります。そんなときにぶつかり合ってパワーを消耗しないための術を、誰もが身につける必要があると思います。

(撮影:梅谷秀司)

麻田 真衣 東洋経済 記者
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