マザーマシン難攻不落の地、米国へ 森精機・現地工場レポート

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森精機以外に日本の工作機械大手で米国に工場を構えるのは、1974年から進出している国内最大手、ヤマザキマザック(非上場・業績非開示)のみ。実は、2000年代前半まではオークマ、牧野フライス製作所、経営破綻した日立精機(後に森精機が営業譲受)といった老舗大手各社も進出していたが、マザックを除く3社は同時多発テロ以降の米国景気低迷が響き、撤退している。

マザックはトヨタの米国進出より10年早い1974年にケンタッキー州に工場を建設。現在では米国の工作機械工場として最大級の規模を誇る。同社の森中晴夫専務は「(為替影響の回避など)目先の利益にとらわれた海外進出をする会社は多いが、われわれはローカルの顧客を開拓し、より良いサービスを提供するために現地生産してきただけ。他社が撤退する中、『マザックは逃げない会社だ』という信頼があったからこそここまでやってこれた」と語る。マーケットは大きいが一筋縄ではいかない難攻不落の地。それが米国の工作機械市場である。

直近決算で売上高440億円を稼ぐ米国事業

森精機は日本からの輸出によって、直近決算である2012年3月期に米国で440億円の売り上げを稼いでいる。00年代半ば以降、米国工作機械販売大手のエリソン・テクノロジーズへの資本参加などによって売上を伸ばしてきた。

北米工場は各所でロボットによる自動化が進む

米国への輸出販売は旋盤を初出荷した1960年頃にさかのぼる。そこからシカゴの統括会社(現在は独ギルデ社との共同販社)を軸に、各地にテクニカルセンターを設置、エリソンを中心とする代理店網の拡充などで顧客基盤を1万2000社以上に広げてきた。その施策が奏功し、リーマンショック後も米国での売上はいち早く回復した。

ただ、採算面では苦戦もあった。米国進出への背中を押したのは長引く円高だ。シェアを伸ばしてきた米国では「売れば売るほど利益が出ない」(森雅彦社長)構造に陥っていた。また売れ筋である中・大型のマシニングセンタ(MC:工具を自動交換し多様な加工をする工作機械の一種)は輸送費など物流費用の負担も大きかった。

これを、現地生産の拡大によって緩和していく狙いである。現在、森精機が米国に輸出する工作機械は月間百数十台。この北米工場で生産するのは売れ筋である横型MCの主力2機種で、現在の月産能力は80台。足元の生産はまだ10台程度で、2013年末には損益分岐点となる月産40台に達する見通しだ。

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