"大学"と"宗教"が機能しない、日本の不幸 藤原和博(その4)

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渡邉:いますね。ただ、そうしたビジネスは起業家思考がある人でないと無理ですよね。現実には、起業家思考がない人のほうが多い。

藤原:そういう人は公務員か準公務員になる。だから20年後には、公務員と準公務員を合わせて、仕事の半分を占めるようになると予言しているわけ。

渡邉:準公務員というのは、どういう意味ですか。

藤原:要するに、公務員に準ずるということ。公務員が年収400万〜800万だとすると、準公務員は100万円〜400万円くらい。たとえば、学校の教員の分野では、おそらく準教員という仕事が生まれてくる。

渡邉:なるほど。これは、非正規社員とは違うんですか?

藤原:雇用形態は非正規かもしれない。NPOやNGOの職員と、ほとんど同じような感じになると思う。

年収200万円でも、家があれば食える

渡邉:そうした準公務員を増やすのは、社会的に問題になりませんか?今でも、大学の非正規教員や役所の非正規職員は、子どもを育てられないレベルの給料しかもらえていません。正規職員の半分以下の給料でこき使われているというイメージが強い。

藤原:年収200万円の人が、年収200万円の人とパートナーになれば、二人で400万円になるでしょ。その二人がもし家を持っていれば、生活できないってことはないですよ。

渡邉:そうか。そういうクラスの人たちが増えればいいってことですか。

藤原:家があるという前提だったらそう。家を借りないといけない場合は厳しいけれど。おそらく20年後には、そういう世界になってしまうと思うけどね。

こうした議論のベースとして、高齢者中心に保有されている個人金融資産の1500兆円をどこまで引っ張り出せるかという話が出てくる。1500兆円の1%でも、15兆円ですよ。それで十分若者は潤うでしょ。どの政権も、この戦略が曖昧です。

一つの案は、前回話したように、その予算を使って、20万人の若者を「災害救助予備隊」として雇用する。

もう一つは、民間からの寄付を引き出し、学校の建て替えや耐震補強のために使う。今、小学校、中学校の校舎や体育館は、築50〜60年というものがたくさんあって、工事を急いでいるんだけれど、自治体のお金だけでは無理なんです。だから、民間のおカネを使ったらどうかと思っているの。たとえば、佐藤さんという人が死ぬ前に、相続税を払う代わりに、自分が世話になった小学校に寄付をしてもらう。

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