頂点にいる人は「具体的な努力」を続けている マッキンゼー出身お笑い芸人が感じたこと

✎ 1〜 ✎ 26 ✎ 27 ✎ 28 ✎ 最新
拡大
縮小

石井:コロッケさんは新しいフレームを作ったわけですよね。すごいですよね。

塩野:ええ。頂点にいる人が、それでもまだ努力をする。なので、このスーパーレッドオーシャンともいえる芸人ワールドで上に行くには、もちろん運もあると思いますが、ものすごい努力をしないと厳しいんでしょうね。実際のところ、どうなんでしょうか。

石井:いや、そのとおりだと思います。努力はもちろんしなきゃいけないし、していない人が売れるわけはありません。でも、具体的にどの種類のことを努力すればいいのかを見つける作業が、また、その前にある気がするんですね。

要するに、たとえば「東大行きます」「マッキンゼー行きます」という目的の場合、何の努力をしたらいいか、わりとわかりやすいじゃないですか。東大に入るためにはこういう勉強をすればいいんだよ、というのがありますから。

受験勉強は変数が少ないのでいちばん楽

塩野:実は受験勉強はいちばん楽ですからね。AをすればBが出る。変数が少ないんです。でも現実の世の中って、あまりに変数が多いんですよね。

石井:ビジネスでも一緒だと思うんです。マッキンゼーも1年目ぐらいまでだったら、やるべきことがわかっている。「エクセルを使えるようになれ」など、具体的に努力をするべきものがわかるんですよね。

問題はその次。自分は何が得意なのか、どういう表現をすると自分がいちばん輝くのか、という点を見つけてそこを努力していく必要がある。ここが難しい。セルフプロデュースじゃないですけど、努力をするポイントを見つけることが大事なような気がします。

塩野:そのとおりですね。あえてコンサルチックに話を進めていきますけれども、ポジショニング戦略として、いちばん避けるべきはキャラかぶりですよね。「高学歴の女ピン芸人枠は空いている、ここにポジショニングしよう」というふうに考えましたか。

石井:それはなかったです。そんな余裕がないんですよ、私。もともと私は目立ちたがり屋だった。高校生のときから友達を喜ばせたくて学園祭のステージ上に立っていた人なんです。だから、人を笑わせるのは大好きで得意だと思っていたんです。それでお笑いの世界に飛び込んだ。

でも、お笑い養成所に入ったらネタ作りがめちゃくちゃ難しい。しかも、漫才よりピンネタのほうが難しい面もあるんですね。私は「独りで知らない人を笑わせるのは、こんなに難しいのか~」っていうところから始まっているんです。ネタがもう全然できない。マイナスから始まっているので、ポジショニングを考える余裕なんてなかったですよ。

だから逆に意地になった面もありますね。「ある程度、舞台でお見せできて、ある程度、笑ってもらえるものを作るとこまでは辞められないぞ」って思いましたので。

(後編は5月30日にお届けします!)

塩野 誠 経営共創基盤(IGPI)共同経営者/マネージングディレクター JBIC IG Partners 代表取締役 CIO

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

しおの まこと / Makoto Shiono

国内外の企業への戦略コンサルティング、M&Aアドバイザリー業務に従事。各国でのデジタルテクノロジーと政府の動向について調査し、欧州、ロシアで企業投資を行う。著書に『デジタルテクノロジーと国際政治の力学』(NewsPicksパブリッシング)、『世界で活躍する人は、どんな戦略思考をしているのか?』(KADOKAWA)等、多数。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT