屍者の帝国 伊藤計劃、円城 塔著

Books Review

伊藤計劃の遺作を導入部に円城塔が450ページの快著に仕立て上げた。魂の抜けた死体に擬似霊素とプログラムを書き込ん(インストール)で屍者(ししゃ)として蘇らせる技術が定着した19世紀末、若きワトソン博士はロンドンからアフガニスタン、日本、米国と、英国政府の間諜として探索の旅に出る。フランケンシュタイン、カラマーゾフ、レット・バトラー、川路利良、グラント将軍、ダーウィンまで登場し、虚実綯(な)い交(ま)ぜ物語は躍動する。重要な役割を果たすコンピュータがパンチカード式なのも心憎い。

アフガンでは屍者たちの銃撃戦、維新の日本では剣戟(けんげき)、米国では列車上の格闘とサービス精神も満点だ。生命とは、人間とは、言葉と意識とはといった哲学的問いが波乱万丈の冒険譚(たん)の中で収斂(しゅうれん)していく。兵士や労働者、記録係など意識と感情を欠いて働く屍者を現代に読み替えるとき、どんな答えが待ち受けるのか。めっぽう面白くてずしりと重い傑作SFである。(純)

河出書房新社 1890円

  

関連記事
トピックボードAD
人気連載
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • いいね!

※過去48時間以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※週間いいね数のランキングです。

トレンドウォッチAD
働く若者へ<br>ワークルールで身を守ろう!

「バイトのシフト入りを強要された」「残業代が適切に払われない」…職場で理不尽な目に遭うこともある。そこで役立つのは労働法=ワークルール。学んでおけば自分を守る武器となる。