「持たない経済」で得する人、損する人 大前研一が語る「アイドルエコノミー」

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図のように、日本では自動車、家電、住宅の普及率は非常に高く、自動車は世帯あたり1台を超えています。しかし、今この瞬間、日本中の自家用車をカメラでパッと映したら、動いていない車のほうが圧倒的に多いでしょう。つまりこれが「アイドル」です。

家電製品も同様です。温水洗浄便座などはその最たるもので、ほとんどの時間は使われていません。さすがに空いている温水便座をビジネスに結びつけることは難しいと考えるかもしれませんが、実は米国に「Airpnp」というサービスがあります。トイレを貸したい人が登録しておくと、借りたい人が地図で検索して利用することができるのです。笑い話のようですが、先進国ではそれほどアイドルエコノミーが一般的になっています。

日本のように13.5%が空き家である国はほとんどないのですが、日本は少子高齢化で人口減少が進んでいきますから、今後もこの割合は増えていくでしょう。もはや35年ローンを組んで4000万円で新築の家を買う必要はまったくなくなっていきます。空いている家を使えばいいわけですから。

“専門家の空いた時間”もアイドル

もう少しアイドルエコノミーの具体例をご紹介しましょう。乗り物なら、タクシー、自転車、助手席、プライベートジェット、ボートなど、あらゆる場所に「アイドル」が存在します。横浜のベイサイドマリーナへ行くと、使っていないボートがずらっと並んでいる。海に浮かんで動いているボートは2、3隻しかありません。

そのほかにも空きリソースは無限にあります。「専門家の空いた時間」もアイドルのひとつです。専門知識を持った優秀な人が、電話の前でお客さんからの問い合わせをじっと待っているのです。ある狭い領域に精通した専門家は、特に地方に住んでいる場合、なかなか需要がないので、手が空いていることが多いのです。

たとえば「長野県でバードウォッチングをしたいので、誰かにガイドしてほしい」というとき、自分の人脈だけで専門家を見つけるのは大変です。でも、マッチングするシステムがあれば、簡単に専門家と出会うことができる。同じ仕組みで、医療の分野であれば専門医にセカンドオピニオンをもらえるアイドルエコノミーもあります。

「モノ」をシェアするアイドルエコノミーも数多く登場しています。高性能のカメラを持っているけれど、普段は使っていないという人は、アイドルエコノミーを介して「海外旅行に行く間だけ、ちょっといいカメラを使いたい」という人に貸すことができます。

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