アメリカで早期利上げ観測が浮上している

米企業によみがえる「ドル高」の悪夢

 5月20日、米国経済が力強さを増し、連邦準備理事会(FRB)の早期利上げが意識され始めた。写真はベトナムの首都ハノイの銀行で5月に撮影(2016年 ロイター/Kham)

[ニューヨーク 19日 ロイター] - 米国経済が力強さを増し、連邦準備理事会(FRB)の早期利上げが意識され始めた。このため企業は、2年にわたるドルの上昇がもたらしてきた逆風からの解放感をほんの束の間味わっただけで、再びドル高の悪夢に悩まされるかもしれない。

足元の主要6通貨に対するドル指数は、5月2日に付けた直近安値から2.9%上昇しており、米企業業績に影響を及ぼしかねない事態と言える。

ドルの値上がりは、今週に入り、複数のFRB高官が労働市場や物価動向を踏まえれば6月の利上げが妥当になるとの認識を表明したためだ。19日にはニューヨーク連銀のダドリー総裁が、6月か7月に利上げが必要な可能性があると発言した。また18日に公表された4月の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨でも、第2・四半期の米経済が上向けば、6月に利上げする必要あるとの意見が大勢だったことが判明した。

一方で第1・四半期の米企業決算に目を向ければ、医薬品・日用品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)<JNJ.N>など業績がアナリスト予想を上回った数少ない企業が理由に挙げたのはこの期間のドルが軟調だったことだ。

JPモルガンの米国株ストラテジスト、Dubravko Lakos-Bujas氏は「ドル安の支えがなければ、事態は惨憺たることになり始める。過去数カ月間、株式市場が喜び浮かれたのはFRBのハト派姿勢が原因だった。しかしFRBの利上げ開始はドル高を意味し、原油価格と新興国市場に再び圧力がかかる」と語り、ドル高は米企業の利益を年間で約1.0%押し下げる公算が大きいとの見方を示した。

調査会社ファイアーアップスによると、昨年第4・四半期には北米企業の4割がドル高が事業の重しになったと答えている。1ドルの上昇で平均2億1700万ドル、1株当たりで0.07ドルの利益を減らした。

米国株に割高感が広がっている中でドルが再び上昇してきたため、一部投資家はエネルギーや工業、ハイテクといった海外売上高比率の高い分野の保有高を圧縮しつつある。

ニーダム・ファンズのポートフォリオマネジャー、クリス・レッツラー氏は「ドル高はまず初めに、海外事業のウエートが大きい工業株や大型株により大きな下げ圧力を加える。同時にFRBが株式投資家が何よりも嫌いな不透明感を拡大させている」と指摘した。

同氏は米国株の売り持ちを推奨している。

S&PキャピタルIQによると、S&P総合500種企業全体の海外売上高比率は47.8%だ。最も比率が高いのは半導体大手マイクロン・テクノロジー<MU.O>の84.4%で、同業エヌビディア<NVDA.O>の83.1%、サンディスク<SNDK.MX>の82.8%などが続く。ハイテクセクターを除くと、セキュリティー関連のアレジオン<ALLE.N>の81.4%が一番高い。

シエラ・インベストメント・マネジメントのテリー・スパス最高投資責任者は、ドル高が進む可能性があることから、新規の顧客資金は為替変動の影響を受けない地方債などの資産に投入していると説明した。

同氏は米国株を現時点でまったく保有しておらず、「FRBの動きに関係なく、米国株は最も割高だ。これがいやがうえにも値下がりリスクを生み出している」と警告した。

(David Randall記者)

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