日本の輸出はなぜ激減したのか 変調きたしたストック取引

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こうなると、20年前の金融知識では歯が立たなくなる。「何か分からない巨大な魔物が突然現れ、アメリカ経済を破たんの瀬戸際まで追いつめた」としか言いようがない。

日本の新聞も、説明に苦労したようだ。「CDSは保険のようなもの」と説明されることが多い。確かに保険に似たところがある。しかし、それが機能するメカニズムは、従来の保険と違う。考えればすぐ分かるように、保険のかけすぎでアメリカ経済が破綻することなどありえない。では、新種の投機商品なのか? ウォーレン・バフェットが「CDSは時限爆弾」と言ったこともあり、日本ではそう考えている人が多い。

これらについては、後の回で詳しく説明する。ここで述べたいのは、「それまで存在しなかったものが現れた」ということだ。実物の製品や商品では、今あるもののほとんどは、20年前にもあった(性能はよくなったが)。まったく新しいものが現れたというのは、ITと金融で見られる現象なのである。

それまで出来ないことが出来るようになった

ストック取引が増えた理由として、規制緩和と自由化が挙げられる。具体的には、次のことが指摘される(詳細は、拙著『経済危機のルーツ』東洋経済新報社、10年、を参照)。

(1)国際資本移動に関する実需原則の廃止。従来は、国際的な資本移動に対して「実需原則」が適用されていた。だから、国際資本移動は、経常収支の変化に対して、受動的かつ事後的に生じるだけだった。為替レートが経常収支で決まるとされたのはこのためだ。しかし、1980年代に実需原則が廃止され、資本は簡単に国境を越えられるようになった。このため、為替レートは資本取引で決まるようになり、また金融政策が海外に波及するようになった。

(2)金融に関する規制緩和と自由化。代表例として、80年代イギリスの「ビッグバン」を挙げることができる。参入規制が緩和され、伝統的金融機関であるマーチャントバンクが敗退して、投資銀行がとって代わった。アメリカでは、銀行と証券業務の分離を定める規制(グラス=スティーガル法)が改定された。また、投資銀行が株式会社化した。

次ページ規制緩和や自由化の影響は確かに大きかったが・・・
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