ダイキンが快進撃、「売上高2兆円」の実力 時価総額はパナソニックや日立を上回る

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ダイキンは収益の約9割を空調事業で稼いでおり(2016年3月期の空調の売上高は約1.8兆円)、うち海外売上高は8割近くに上る。そのため、各地域の経済環境や為替の影響を受けやすい。

日本では暖房機能を強化した「うるさら7」(写真)などの高付加価値商品や、デザインに優れたマルチエアコンなど独自商品を拡販する

また、エアコンは猛暑や暖冬など、天候によって販売数が左右されやすく、市場環境を読むのが難しい商品でもある。それでも、ダイキンは各市場の動向を素早く把握し、国内や米国、欧州でバランスよく稼いでいるのが特徴だ。もはや死角が見つからない。

また、営業利益率は10%を超え、東芝など低収益にあえぐ国内の白モノ家電メーカーとは一線を画している。5月20日の時価総額は2兆7005億円と、日立製作所(2兆4167億円)やパナソニック(2兆3689億円程度)を上回り、市場からの評価も高まっている。

海外買収や他社との連携もさらに加速

それだけではない。さらなる成長に向けた手も打っている。フィルタ事業を新たな収益柱を育成すべく、2月に産業空調のフィルタやクリーンルーム用フィルタに強みを持つ米フランダース社の買収を発表。4月にもイタリアの業務用冷凍・冷蔵機メーカー、ザノッティ社の買収を明らかにするなど、積極的に規模拡大を進めている。

他社との連携も加速する。1999年から包括提携を結ぶパナソニックと新たな協業について協議中だ。現在は部品の一部を共同調達したり、業務用エアコンの製造の一部をダイキンが請け負ったりしている。詳細な内容は明らかにされていないが、環境性能の高い「R32」と呼ばれる冷媒の普及を世界で進めるとみられている。両社で規模を拡大するというよりは、日本で主流のR32を他地域にも広めていく試みのようだ。

買収や他社との協業を積極的に行い、さらなる成長を目指すダイキン。6月には2021年3月期をターゲットにした中期経営計画が発表される予定だ。景気減速の影響をものともせず、好調を維持するダイキンだけに、かなり強気な数字が示されるだろう。快進撃は当分終わりそうにない。

富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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