ベネッセ原田氏の無念、プロ経営者が退場 原田氏はトップ在任中に何を成し遂げたのか

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ただ、ネックとなったのが価格。iPadを持っていない家庭は月額2000円程度で端末を借りられるが、「(家計)負担が大きすぎた」(原田氏)。また専用端末ではないため、子どもが自由にインターネットやゲームができることに、難色を示す保護者もいた。新規の入会数はいまだに伸び悩んでいる。

一方、大手塾の関係者は進研ゼミ+の真の狙いを、「塾での集団指導を想定した教材」と分析する。集団授業でも端末を使い、個人の進度に合わせた指導ができるからだ。

報酬に見合う実績をあげたのか

就任会見で教育事業の経営が「人生の集大成」と語っていた原田氏。写真右が創業家の福武総一郎氏(2014年3月、梅谷秀司撮影)

家庭向け通信教育の会員数が頭打ちになる中、ベネッセは子どもとの新たな接点を求め、塾業界に手を伸ばしている。「ここ10年ほど、お茶の水ゼミナールや東京個別指導学院といった塾を次々と買収してきたのも、その布石だろう」(前出の関係者)。

すでに15の塾とフランチャイズ契約を結んでおり、進研ゼミ+を教材として、活用し始めている。「従来の自前主義から脱却して、他社と連携すれば、復活の道が見えるかもしれない」(野村証券の繁村京一郎アナリスト)。原田氏は、国内会員数が底を打つのは、「1年半後くらい」と予想している。

業績不振を理由に、プロ経営者がトップの座を追われるのは、2015年12月のLIXILグループの藤森義明氏(64歳)に続く事例となった。

原田氏の役員報酬は2014年度で1.42億円。はたして報酬に見合う変革の素地を作り上げたといえるか。答えを見ずに原田氏はベネッセを去る。

「週刊東洋経済」5月28日号<23日発売>「ニュース最前線02」を転載) 

平松 さわみ 東洋経済 記者

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ひらまつ さわみ / Sawami Hiramatsu

週刊東洋経済編集部、市場経済部記者を経て、企業情報部記者

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