「パナマ文書」に載った日本人・企業の"事情"

タックスヘイブン活用の意外な本音が明らかに

日本にはタックスヘイブンを利用した企業の過度な節税を防ぐ税制がある。租税負担割合(実際の税負担水準)が20%未満の国や地域にある海外子会社の所得は、原則として親会社の所得と合算して申告する必要がある。したがって、企業側が適正に申告していれば、問題にはならない。

「大手企業のほとんどは対応しているはずであり、パナマ文書公開による混乱は少ないだろう」と見るのは、元国税局国際税務専門官である、エヌエムシイ税理士法人の吉田雅相税理士だ。

小社刊『海外進出企業総覧』によれば、パナマ、バミューダ、バハマ、ケイマン諸島、バージン諸島に、100社以上の日本企業が法人を持っている。

日本郵船や共栄タンカーなど、2ケタの現地法人を持つ企業も存在する。ケイマン諸島にある中国の電子商取引最大手アリババグループの持ち株会社へはソフトバンクが出資している。

一方、個人はどのような理由で、タックスヘイブンを活用したのか。楽天の三木谷浩史社長は、楽天創業以前の1995年、個人で投資した案件だと説明する。知人から誘われて、外国の投資会社に約80万円を出資したが、その後に売却したという。セコム創業者の飯田亮氏は「正しく納税済み」、UCC上島珈琲の創業家出身の上島豪太UCCグループCEOも「ビジネス目的」と回答している。

ベンチャー企業の株主になってもらうためのスキーム

パナマ文書に名前が載っていたある経営者は、「今から20年ほど前、外国人に出資してもらうためのスキームとして活用した」と明かす。この経営者は日本でIT関連のベンチャー企業を設立。その出資者として当時親交のあった複数の外国人が候補に。

だが、株主になるための日本語での法律理解は難しく、出資額の増減も容易ではない。そこで、投資を目的とした法人をバージン諸島に設立。外国人の知人はその法人に出資し、その法人がベンチャー企業の株主となる形を取った。

これまでタックスヘイブンに法人を持つことは違法ではなく、適正な課税申告をしていれば許された。ただ、タックスヘイブンは、法人の設立や清算が容易であることに加え、取締役会の開催義務がないところもあるなど、規制が緩い。資金の流れの透明性も欠如している。「先進国の財政が悪化する中、OECD(経済協力開発機構)などが中心となり、各国が共同して租税回避や節税行為への対応を進めている」(大和総研の吉井一洋制度調査担当部長)。

5月下旬の伊勢志摩サミットではこうした“不透明さ"への対策が議論される可能性が高い。安倍晋三首相は5月17日の予算委員会で「国境を越えた不公正な課税逃れを防止するため、日本は議長国としてリードしていく」と語った。従来のようなタックスヘイブンの活用ができなくなると、日本企業の中には海外戦略の練り直しを迫られるところも出てくるだろう。

「週刊東洋経済」5月28日号<23日発売>「ニュース最前線01」を転載)

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