儲かる漁業をつくれ! 元伊藤忠社員の挑戦 新世代リーダー 立花貴 漁師

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だが、オーガッツでは、それだけにとどまらない。「消費者ともっと深いつながりをもちたい」「地元漁師たちと一緒に、漁業を育て、町を育て、人との絆を育てていく」という考え方が運営の根底にある。実際、そだての住人には海産物を育てるところから、かかわってもらう。

丹念にホタテを箱詰めしていく。根気のいる作業だ

また、原則毎月1回、そだての住人イベントを開催。参加できる人には実際に雄勝に来てもらい、漁師と話をしたり、海産物を育てる作業風景を見学したり。希望者は養殖体験もできる。もちろん、海産物がすくすく育て、という意味もある。「そだての住人」は生産者と消費者が触れ合う、そんな仕組みだ。

「お前の言っていることはキレイだが、グッと来ない」

なぜ立花は雄勝で「オーガッツ」の立ち上げに参画したのか。まずはいったん時間を戻し、立花が社会人になってから、どんな人生をたどってきたのか、紹介しよう。

立花は仙台出身。3人兄弟の長男として育ったが、母子家庭で、生活保護を受けながらの貧しい生活だった。苦学のうえ2浪して入った東北大学を卒業後、伊藤忠商事に入社。起業をするための戦略的な選択だった。

すでに就職活動時から「35カ年計画」を立て、「60歳手前の人生をイメージした」という。まず、社会人になってからの最初の5年間で「人」「モノ」「カネ」「情報」の4つを学ぶ。起業し、株式を公開する。その企業を、社会に不可欠な存在に進化させる。そして、最後には、世の中に役立つ仕組みを4つ、ゼロから生み出す、というものだ。

伊藤忠では、ファミリーマートへの出向なども含め当初の計画を1年超過して6年働いたが、きっちり起業。1999年末のことだった。業務用食材などをネットやカタログで販売する会社で、名前は「エバービジョン」。ビジョンを追いかける、という意味だ。対象は主に個人飲食店向けで、伊藤忠も出資してくれた。世話になった上司には、新会社の報告かたがた、ときどき相談してもいたという。

その相談相手の1人に、澤田貴司(伊藤忠商事→ファーストリテイリング副社長→現・リヴァンプ代表)がいた。澤田に、立花はいつも怒られていたという。

「お前の言っていることはキレイだけど、全然グッと来ないんだよ」。当時、立花には澤田の言っていることがよくわからなかったという。

次ページ株式公開を目指していた立花だが・・・
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