「京都鉄道博物館」車両搬入はドラマの連続だ さまざまな難関をいかに通り抜けたか?

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そして、親しみを込めていたのは鉄道ファンだけでなく鉄道側の人にとっても誇りであったようだ。EF81が金沢総合車両所松任本所で整備されて回送されてきたとき、心尽くしの大きな花束が運転室に置かれていた。後にも先にもこの1両だけであり、武骨な機関車の運転台が違うものに見えた――と、受け取った館側の担当者は語った。

トワイライトプラザに隣接する建物はSL第2検修庫。以前は古いうえに重文としての制約を受けながら扇形車庫内で行っていた蒸気機関車の全般検査を、近代的設備の下で効率よく進めるために新設されたものである。言うなれば今後のSL動態保存、および本線運転の将来を約束する施設として、SLの殿堂に隣接して建てられた。正確には、博物館の施設ではなく、フェンスで隔てられた梅小路運転区のものだが、本館2階と扇形車庫エリアをつなぐ連絡デッキから、棟内を見下ろすことができる。

鉄道の本当の姿、現場の力強さも見られる

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現在、山口線で運行しているC571の新たな予備機、実際にはおそらく陰の主役となるD51200が全般検査に合わせて本線運転向けの徹底した整備を行っている。胴部分、キャブ、テンダーそれぞれにバラバラな状態は、まさに工場の光景であり、美しい状態で保存展示された博物館とは違った、現場の力強さがある。

鉄道の本当の姿を見せる京都鉄道博物館のテーマが、ここにも現れている。ガラス窓に張り付いて、棟内をのぞいている家族も多い。屋外にはD51の次に作業を待つC61の解体部品が並んでいた。

(写真はすべてレイルマンフォトオフィスが撮影)

鉄道ジャーナル編集部

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車両を中心とする伝統的な鉄道趣味の分野を基本にしながら、鉄道のシステム、輸送の実態、その将来像まで、幅広く目を向ける総合的な鉄道情報誌。創刊は1967年。

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