「キャリアアップ信仰」という名の地獄 知らないうちに陥っている?

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「生き残る」ために人材市場における自分の価値を高めようというのも、実はほかの誰とでも置き換えられるコモディティ(顔無し)として自分を見ることにほかならず、それはつまり「生きながら死んでいる」ことにほかなりません。自分の人生を生きているつもりで、他人の人生を生きてしまっている人が、なんと多いことでしょう。

本当に恐ろしいのは、「生きにくい時代を生きる」ことではなく「生きながら死んでいる」ことです。転職する同僚やリストラされる上司を見ながら、自分は果たしてこのままでいいのだろうかと不安になり、自己啓発セミナーに参加したり、転職先紹介サイトに登録したり、英会話教室に通ったりと、焦りによって活発に動く。

MBAでも「危機感の区別」を重んじている

MBAのリーダーシップ論でも同様のことが言われています。それは、コッター教授が提唱した「真の危機感」と「ニセの危機感」の区別です。どういうことかというと、明確なビジョンのない中で不安感に促されるまま「ニセの危機感」によって右往左往しても、決していい結果は出ない、ということです。

自分の人生、これでいいのだろうか?不安でどうしようもない方はまず、不安を埋めるために焦ってしまっている体をいったん止めて、落ち着かせましょう。

そして、独生独死独去独来、死を強く想うことです。

なぜ、死を想うことが大切なのか? 一度、死に直面した人の多くは、人生観が変わります。九死に一生を得た人は、「自分は一度死んだ身だから、残りの人生はすべて授かり物、誰かのために役立てばそれでいい」ということをよく言われます。欲しいものなど特にない、最低限、生きていくために必要なものがあればそれでいい。「明日、食べていけるか」の不安よりも、「今日、食べられた」ことへの感謝。「死ぬ」ことがリアルに立ち上がっているからこそ、輝いて「生きる」ことができるのです。

スティーブ・ジョブズに学ぶ「死」を意識して生きる言葉

日常生活で「死」を意識すること。シンプルなようでなかなか難しいことのように思えますが、この考え方は、実は多くの成功者の日常にも取り入れられています。スタンフォード大の卒業式で行ったスピーチで、スティーブ・ジョブズが紹介した有名なエピソードがあります。彼は毎朝起きると、鏡の前に立ち、そこに映った自分に向かってこう問いかけたそうです。

If today were the last day of my life, would I want to do what I am about to do today?
(もし今日が人生最後の日だとしたら、今やろうとしていることは本当に自分のやりたいことだろうか?)

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