「地震保険は損だ」という考えが危ない理由 日本は地震国「安全な地域はない」と心得よ

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数値だけみると「6割もあるじゃないか」と思われるかもしれないが、地震保険は火災保険加入時にセットで加入することが基本のため、申込書に「地震保険には加入しない」ということの意思表示の捺印をしたときだけ加入しないようになっている。ということは4割を超える契約で、明確に地震保険は要らないと意思表示をして火災保険を契約していることになる。

満額補償されない地震保険は損なのか

実際に契約の場に立ち会う保険代理店に話を聞いてみると、地震保険の加入率が低い理由が垣間見られる。

ひとつは補償の内容だ。地震保険は被災者の生活の当面の安定を目的としているため保険金は一緒に加入する火災保険で設定した保険金額の30~50%(上限は建物5000万円、家財1000万円)で設定することとされている。つまり地震で建物が全壊しても保険金額の50%までしか補償されないのだ。この仕組みを損だと思ったり、どうせ半分しか補償されないなら加入しなくていい、と感じたりする人が多いようだ。

しかし本当にそうだろうか。家を建て直すにしても、修繕するにしても、引っ越しをするにしても先立つものはおカネである。地震保険はその趣旨からも価値ある保険といえる。最近では個人分野だけでなく、事業者の事業再建を支援する枠組みもある。

事業者でいうと罹災直後から事業再開までの休業期間を補償する商品が全日本火災共済協同組合連合会から発売されたり、居住用住宅の場合はSBI少額短期保険が地震保険の上乗せ補償としても使える地震補償保険を発売していたりと、個人、事業主を問わず、震災からの再建に欠かすことのできないおカネを補償する保険があることになる。特に事業主は雇用主としての責任もあり、BCP(事業継続計画)の観点からも、事業再建への備えは必要かつ意義のあることだ。

日本に地震の安全地帯はない

地震保険の加入率が低い要因のひとつに、南海トラフ地震などの太平洋沿岸や首都圏など、いずれ大きな地震が来るとされているところを除いて、日本人の多くが「自分の住んでいる地域は地震が来ない」と思い込んでいるところがあることだ。

この地域別の地震危険度が説明される際に頻繁に目にするのが地震のハザードマップだ。正確には「確率論的地震動予測地図」 といい、文部科学省に設置された政府の特別機関である地震調査研究推進本部(地震本部)によって作成され、今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を地図上に5段階の色で表している。テレビや新聞などでも頻繁に紹介されているので見たことがある人も多いだろう。

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