次の大地震は伊予灘・薩摩西方沖を警戒せよ 予測のプロ・村井俊治氏が語る「熊本の次」

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このため、自前の電子基準点を持って補完すれば、発生の数日前の注意喚起をできると考えた。熊本でも自前の電子基準点があれば、もっと詳細に動きをつかめたはずだ。

国土地理院は実は秒単位で基準点の変動を捕捉している。しかし、地図作成用の測量が使用目的のため、われわれが欲しいデータ形式では提供されていない 。

基準点を100カ所程度まで増やす

――ドコモによる支援の詳細と今後の展開は?

村井俊治(むらい しゅんじ)/東京都生まれ。 1963年東京大学工学部土木工学科卒。1983年に東大生産技術研究所の教授となり、1992~96年に国際写真測量・リモートセンシング学会(ISPRS)会長。2000年に東大を定年となり名誉教授に。2007~2015年に公益社団法人である日本測量協会の会長を務めた。2013年から地震科学探査機構の顧問(撮影:梅谷秀司)

ドコモには現在、伊勢志摩サミットが開かれる三重県の賢島と、神奈川県の三浦半島の2カ所にある基地局に、実験として電子基準点を置いてもらっている。データ電送は高速回線経由だ。これ以外にJESEA自社の基準点を、神奈川県内の小田原と、関東大震災の震源に近い大井松田に設置。以上4カ所のデータをリアルタイムでウオッチしている。

ドコモは今年中に、基準点を14カ所ほど追加してくれる計画で、JESEA自社の基準点と合わせて18カ所になる。将来的にはこの数を100カ所程度まで増やしたい。そうなれば予測の体制は盤石になる。2020年には衛星による位置観測の精度がミリ単位に達すると言われており、大きな成果が見込めるはずだ。

――南海トラフ地震などでは「何年後の発生確率が何%」などの予測がささやかれているが、こうした形での情報提供はしないのか。

地面の状態は刻々と変わる。1回行った予測がそれで固定できるわけではない。人工衛星によって日々観測を続け刻々と地面の異常変動を分析して地震発生の可能性を予測できる点が、他にはない、われわれの持ち味だ。

「何十年に何%」という予測方式は、40年くらい前に確立された「グーテンベルグ・リヒター則」という原理に基づいている。しかし、これは過去に地震が観測された場所でなければ通用しないし、計算の根拠を知っている人はほとんどいない。いつかはそこに大地震が来る、という程度にしか意味をなさないと考えている。

駅 義則 東洋経済オンライン編集部

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えき よしのり / Yoshinori Eki

1965年、山口県生まれ。1988年に時事通信社に入社し、金融や電機・通信などの業界取材を担当した。2006年、米通信社ブルームバーグ・ニュースに移ってIT関連の記者・エディターなどを務めた後、2015年9月に東洋経済オンラインのエディターに。現在の趣味は飼い主のない猫の里親探し

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