「オバマ広島訪問」の焦点は、核軍縮の加速だ 元軍縮大使が注目する歴史的訪問の「成果」

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まず、核は「非人道的」ということが今まで確立されていないことを指摘したい。他の兵器、いわゆる通常兵器の中には、非人道的だと断定されているものがある。それらは、また、使用が禁止されている。

時代はかなりさかのぼるが、一部の兵器はあまりにむごたらしく人を殺傷し、苦しめるので19世紀の終わりころから使用を禁止しようとする動きが起こった。

それと並行して、国連などでは、「非人道性」とは、「過度に」あるいは「無差別に」人を殺傷することだということが明確化された。そしてそのような性格を持つ毒ガスや対人地雷は条約で禁止されることになった。つまり、すべての兵器は本来人を殺傷するものだが、なかでもとくに「非人道的」な兵器は禁止されたのだ。

核兵器不拡散条約(NPT)の制定も…

核は70年前広島と長崎に投下された時から恐ろしい兵器だと思われてきた。だから、核軍縮が始められ、核の2大保有国である米国とロシアによって冷戦時代から戦略核削減交渉が行われてきた。核の拡散を防止する条約(NPT)も作られた。

しかし、核は禁止されていない。違法として禁止しようとする努力も行われているが、それは実現していない。それどころか、核が「非人道的だ」ということさえ確立していない。

ここには一種矛盾した状況が生じている。核は、「過度に」かつ「無差別に」に人を殺傷し、しかも、「多数の市民を」殺傷するという問題まであるのは明らかなのに、毒ガスや対人地雷のように「非人道的だ」と断定されることも、禁止されることもない状態にあるのだ。

なぜこのような状況が続いているかと言えば、核は、現実の国際政治において「抑止力として必要」という考えが強いからだ。

そこで、核を直ちに禁止するのは無理だとしても、まず「核の非人道性」は確立しなければならないという考えが強くなった。数年前から始められた「核の非人道性」に関する国際的運動はそのための一つの試みだ。

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