「オバマ広島訪問」の焦点は、核軍縮の加速だ 元軍縮大使が注目する歴史的訪問の「成果」

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オバマ大統領は平和記念公園を訪れ、犠牲者の霊に献花し、また、平和記念資料館を視察することになるだろう。このほかにも関連の重要施設があり、日程の許す限り足を運んでもらいたいものだ。

核軍縮は、米国とロシアの対立により進捗状況は芳しくない。それだけに、オバマ大統領の広島訪問により弾みがつくことを期待する声が高い。

オバマ大統領が2009年に宣言したこと

オバマ大統領は就任後間もない2009年4月、プラハ(チェコ)での演説で、「核のない世界」の実現を目指すと力強く宣言し、世界に核軍縮への期待を抱かせた。

その後実際にどの程度進展したかについてはさまざまな見方があり、期待外れだという意見も少なくない。現在米ロ両国が保有している核弾頭の数は約1万5000発と推定されており、これは冷戦時代最も多かった時の6万発以上に比べると確かに減少しているが、現在の世界ではそのような数も必要ないと考えられているからだ。

筆者も、オバマ大統領の広島訪問が核軍縮を再活性化し、強力に進める原動力になってほしいと願っているが、具体的な核軍縮の方策や計画、たとえば核弾頭の削減目標が示されたり、あるいはロシアに対する新たな交渉の呼びかけが行われたりするとは思えない。客観的に見てそのような表明をする状況にないし、オバマ大統領の広島訪問には別に重要な目的があるからだ。

それは、核の恐ろしさ、「非人道性」を被爆地、広島で「実感」してもらうことだ。

これには説明が必要だろう。

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