ゼネコン、「我が世の春」はいつまで続くのか 採算の良い工事を選び、利益が急改善

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しかし、今2017年3月期に目を向けると、スーパーゼネコン4社はそろって営業減益予想に傾いている。大成建設が15%減、鹿島が24%減、大林組が11%減、清水建設が1%減だ。懸念しているのが、深刻化する現場の技能労働者不足とそれに伴う労務費の高騰だ。

都内の再開発が徐々にピークを迎える(撮影:今井康一)

今期は秋以降から都内の再開発が徐々にピークを迎えるだけでなく、新国立競技場をはじめ東京五輪の関連工事も本格化する。鹿島は「年明けくらいから労務費や資材価格がかなり上がる」と見込み、売上総利益率は、2016年3月期の11.8%から、2017年3月期8.7%まで下がると予想する。清水建設幹部も労務費について「下半期は前年同期と比べて2~3%は上がるだろう」とみる。

確かに労務費の高騰は避けられないだろう。だが、スーパーゼネコン4社の手持ち工事は急増している。大成建設の2016年3月末の手持ち工事は前期比7.1%増。鹿島は同4.7%増、大林組も同13.3%増だ。

民間工事の利益率はさらに改善する見通しも

しかも、手持ち工事は、一般的に利益率が高いとされるトンネルなどの官公庁やNEXCO(高速道路会社)発注の土木工事に加えて、民間の建築工事も採算の良い大型案件が中心だ。「土木工事のさらなる利益率改善はないかもしれないが、民間の建築工事の利益率はさらに高まるだろう」と見通すゼネコンもある。

今期のスーパーゼネコン4社の営業利益は、会社想定ほどには悪化しないと予想される。

来2018年3月期以降も、ゼネコンが採算性の高い案件を選ぶことができる状況は続くもようだ。業界内では少なくとも2019年までは今の好環境が続くという見通しが大半となっている。

とはいえ、人件費を含めたコスト高が進む中で、現在の利益率をキープすることは難しい。高齢化が進む現場労働者の確保策など課題も多い。工事現場での作業を減らすプレキャスト化や人材配置の適正化など、施工効率アップのための取り組みを、高収益に驕ることなく進められるかどうかが、今後のゼネコンの優劣を決めることになる。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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