アベノミクス終焉で日本はかなり厳しくなる 藤野英人氏が英EU離脱後の日本経済を予測

拡大
縮小

円安については、大きかったのが東日本大震災の影響でした。東日本大震災を契機に原発が停止したことで、原油を大量に輸入しなければならなくなったことに加え、原油価格も上昇しました。これによって経常赤字が拡大し、結果として円安になったのです。

もちろん、いわゆる「黒田バズーカ」と呼ばれる金融緩和による円安効果も過小評価はできません。ただ、ほかの要因については、仮に民主党(当時、現民進党)政権であったとしても、同じように効果が上がったものです。野田佳彦元首相がもうちょっと頑張っていれば、株価も上がって、民主党はもう少し評価されたのではないでしょうか。

円高圧力の奔流にのみ込まれる日本経済

しかし、去年の夏ごろから「満月」は欠け始めました。団塊の世代が70歳を超しはじめ、体力と好奇心が落ちたことで消費が陰りだしたのです。あと5年もすれば団塊世代は全員70~75歳になります。これより下の世代は人口も少ないしあまりおカネがありません。これによる消費の落ち込みは避けられません。

さらに、これから原発が続々と再稼働します。すると原油の輸入が減りますし、そもそも原油価格が下がっています。これらは一概に悪いことではありませんが、経常収支の改善は円高につながります。

これに対して、日銀は1月の政策決定会合でマイナス金利の導入を決め、いったんはなんとか円高を止めました。「円安にならなかったではないか」と言うエコノミストやメディアも多いですが、それは円高への圧力を軽視しています。あれをやっていなかったらもっと悪くなっていたはずです。

これまでは、津波のような円高の波をマイナス金利という堤防でなんとか進撃を止めていました。それが英国のEU離脱によって堤防が決壊し、急速な円高が進みました。ですが、ファンダメンタルズからみれば円高圧力はまだ続きます。貿易収支が黒字基調となり、経常収支の改善が持続するからです。これをなんとかするには、少なくともマイナス金利をさらに拡大しないことには円安に戻すどころか、円高に拍車がかかるおそれがあります。

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