東芝が過去最悪の赤字、終われない「綱渡り」 大混乱の1年が過ぎても、課題は山積みだ

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赤字続きのパソコン事業については、VAIO、富士通と統合を目指し交渉を進めていたが決裂。機種数を減らし、企業などのビジネス向けを注力することで、営業黒字化を目指す。室町社長は「あらゆる可能性を検討する」と語ったが、東芝だけでもなんとか赤字は出さずに済みそうだ。

今期計画が達成できれば、株主資本比率は8%まで回復するが、まだ健全なレベルとは言えない。平田CFOは資本増強策について、「まずは(利益を着実に稼ぐ)自助努力を行った後で検討したい」と語った。現時点では増資は考えておらず、利益を積み上げることで2ケタ台に回復させる方針だ。今期業績についても「外部環境の悪化を含めてみている。事業をコントロールし、当期純損益は1000億円の計画以上に出していく」(平田CFO)としている。

最重要課題は資本増強だが…

公表数値以上を目指すと語った平田CFO。再びひずみが生じるおそれはないのか(写真は4月の会見時のもの。撮影:尾形文繁)

確かに資本増強は、東芝にとって喫緊の課題だ。だが、不適切会計に関わったとして引責辞任した元CFOの久保誠氏も、決算説明会のたびに「(公表している)数字は最低線。さらに上を目指す」と強調していた。

平田CFOの強気な姿勢は、かつての久保氏の姿に重なる。公表数値よりも高い業績を目指すことで、再びひずみが生じないか、一抹の不安も残る。

東芝は3月に、今2016年度を初年度とする中期計画を発表している。人事面でも、6月にはピンチヒッターで社長に就任した室町正志氏が退任し、綱川智現副社長に交代する。また、WHのダニー・ロデリック現社長が東芝のエネルギー部門のトップに就任する。

人員整理、トップ交代、事業売却など経営再建を進める同社だが、「新生・東芝」と表現するにはまだ道半ば。綱川新体制は資本増強を最優先に進めなくてはならない「綱渡り経営」の状況の中で、成長に向けた投資ができる環境を取り戻すことが求められる。

富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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