シャープの失敗が映すニッポン電機の急所 【短期集中連載】冨山和彦氏に聞く(第1回)

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嫌な言い方だが、いつでも切れる変動費で戦わないといけないが、日本の会社ではそれは難しい。ビジネスが減少したときに、人件費を調整できるプレーヤーと、ピークで持たないといけないプレーヤーとでは勝負にならない。各社はリストラに懸命だが、日本の場合、労働力を変動的に持てないので、いったん人員削減をすると何らかの要因で生産を増やすことが必要になってもすぐに雇えない。機会ロスが出る。つまり、いろんな意味で日本をベースに活動する日本メーカーにとって、パワーゲームの世界は非常にハンディキャップが大きい。

液晶は、スマートフォンなど最終製品に占める割合が大きいことも作り手には不利に働いている。アップルのような買い手は、メジャーな部材の価格は徹底的にたたきにくるからだ。これが接着剤や、フィルムのバックライトで使う蛍光材料といったマイナーな部材なら、値下げ要請もそう強くない。

全体の構成比率は小さいが、そこでトラブったら致命的になるデバイスやコンポーネントがいちばん儲かる。今の時代は「スモール・バット・グローバル」が強い。小さいけれど世界を独占できる部品を100個持っている会社のほうが、メジャーな部材を1個持っている会社より、相対的に安定的で高収益。村田製作所や日本電産、京セラがその見本だ。

ルネサスの問題と再生のカギ

今、経営危機にあるルネサスエレクトロニクスに話を移そう。半導体は2つの負け戦がある。1つはメモリの負け戦。メモリというのは量産、規模の経済のパワーゲームの世界。投資のタイミングと集中投下が大事で、市況品なので製品価格はマーケットが決める。パワーゲームが日本勢に向いていないのはこれまでに説明した通り。もう1つがロジックの負け戦。ビジネスモデルの問題だ。今、ルネサスはこの問題を抱えている。

マイコンやシステムLSIといった商材は、100品目があったとしても共通コストがあまりない。共通コストが小さい世界なので、全体で規模を拡大しても意味がない。基本的に顧客ごとの特注品なので、1個1個の商材のコストと製品価格をきちんと管理できるかが勝負になる。製品価格は1個1個買い手と交渉することになるので、商談時の交渉力が肝心になる。

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