文化はダーティなところから生まれる 知の「新世代リーダー」 東浩紀 思想家(下)

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――求められるリーダー像も変わってきた?「俺が俺が」タイプはもう古いということでしょうか?

単に、若いからとか、新しいからではリーダーにはなれないでしょう。選挙が来るたびに「世代交代」の必要性が叫ばれますが、若い世代だからといって一枚岩で、ひとつの価値観を共有しているわけではない。

そもそも世代交代をすればいいというものではない。若い人だけで議論させると、必ず最後は、「団塊世代が問題なんだ」とか、「あいつらが退場してくれれば、世の中よくなる」と、いわゆる「老人だから悪、若者だから善」の図式で終わることが多い。でもそれは、同世代ならみな賛成してくれるから、というだけだと思います。

リーダーにとって大事なのは、年齢ではなく、明確なビジョンを持っていることですよね。

個人が決定できる国へ

――そして、そのビジョンを持つには、思想や哲学など、人文学的知識や教養が、ベースとして必要だということですね。

僕はそう思います。現代人は、自由や平等を当たり前の権利として疑ってもいないけれど、国民が自由や平等を得たのはすごく最近の話。しかも、自然発生したわけではなく、人工的につくられたものです。翻ると、自由や平等は人工的につくられたものだけに、いつなんどき、またひっくり返るかもわからない。そういう意識を持つことですね。 

あと、組織と個人のバランスで見ると、みな組織に軸足を置きすぎだと思います。もう少し、個人で情報発信したほうがいい。小さい組織の社長をやってみていいなと思ったのが、面白い提案をもらったら、「いいね、ウチで出そう」と言えること。大手出版社のほうが最終的には大きいことができるでしょうけど、個人ベースでは、なかなか決定はできないでしょう。善しあしもありますが、とがったことがポンポンできるのは、小組織であり個人。大組織でも、個人の裁量が大きい組織です。

個人が決定できることが多い国になると、日本はもっと魅力的になる。そして、ソーシャルの力も倍増する。ソーシャルネットワークとは、本来、人が言ったことを、「それ、面白いね。俺が通しておきますよ」とパッと言えることです。そういう人同士がつながらないと、強いパワーにならない。組織人がいくらつながっても、知り合いが増えるだけで、うねりにはなりません。だからこそ、組織以外の場所で動ける個人が増えるといいなと思います。

つまり、新世代リーダーの条件は、明確なビジョンを持って「個人で動ける」ことですね。

(撮影:今井康一)

佐藤 留美 ライター
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