活きのいい奴らは、石巻とバングラに向かう 藤原和博(その2)

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過去10年、日本の仕事をめぐる状況は様変わりした。
『10年後に食える仕事 食えない仕事』。仕事の未来をマトリックスで4部類している。
インド、中国では毎年数百万人単位でハングリーな大卒者が誕生。また、ネット・通信環境が大きく改善したことで、定型業務やIT開発を新興国へアウトソーシングできるようになった。仕事の枠を日本人同士で争っていればよい、という時代は終わった。さらに、人口減少に伴う国内マーケットの縮小も追い打ちをかけている。
これから日本の仕事はどう変わるのか? 10年後にも食えるのはどんな仕事なのか。当連載では、ベストセラー10年後に食える仕事 食えない仕事の著者であるジャーナリストの渡邉正裕氏が、"仕事のプロ"たちとともに、仕事の未来像を探っていく。

(司会・構成:佐々木紀彦)

【対談(その1)はこちら

――第1回目の対談では、藤原さんから、「グローバルで勝負するエリート以外の人々は、コミュニティで働くことになる」との未来予測を伺いました。そして今後、日本の企業がさらに海外へと脱出し、失業率が上がるのではないか、という話になりました。

渡邉:日本経済は1997年をピークに下がり続けているにもかかわらず、失業率はずっと上がっていません。2012年9月時点の失業率は4.2%で、先進国の中ではドイツと並んで低い状態です。この数字が、どこかで一気にガタっと上がっていくイメージはありますか?

藤原:日本の今の家庭のあり方として、出戻りがあった場合には食わしてしまいますよね。

渡邉:出戻りというのは、どういうことですか? 要するに、1回会社に勤めた後、辞めて実家に帰ってくるということですか?

藤原:そう。日本では、会社を辞めて失業しても、求職していない人は、失業者と見なされないよね?

渡邉:ええ、ハローワークに「職を求めています」という申請を出さないと、カウントされません。

藤原:そうでしょ。だからニートなどは入ってないよね。そういう意味では、日本の今の母親は、30歳だろうと40歳だろうと、男の子だろうと女の子だろうと、実家に戻ってきたら食わせてしまう。そこがすごくヘッジになっていると思う。

ヨーロッパ、たとえばフィンランドの場合は徴兵があって、徴兵の後に家に戻るということはまずない。子どもは外に出て自分で食っていくというのが前提になっている。男の子が友人3人とアパートで共同生活することもあれば、女の子と同棲することもある。男女がくっついたり離れたりしながら生活していくので、離婚率はかなり高いそうなんだけど。

そうした社会と日本の社会はちょっと違うじゃないですか。日本は、ある種の儒教系の世界といえばいいのかな。母親が息子をできたら離したくないみたいな密着度がある。

もし日本がヨーロッパのように、「18〜20歳ぐらいになったら家に戻ってくるのはおかしい」という価値観だったら、失業率はこんなもんじゃないと思うんですよね。

渡邉:そうですね。去年、スペインで取材したんですけど、スペインは若者の失業率が50%もあるんですよ。

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