大阪は長年の「地盤沈下」から抜け出せるのか どないやねん?ポスト橋下の大阪・関西

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行政のスリム化を進める一方で、教育改革などの重点分野には大きく財源をシフトさせた。2010年度に1557億円だった大阪市の「子ども・青少年関連」予算(9.2%)を、2016年度には1872億円(11.3%)にまで増加させている。

民間の活力導入/府市の財務改善に取り組んだことも、橋下維新の特徴である。泉北高速、海遊館、大阪マーチャンダイズマートビルなど、大阪府知事時代、市長時代に率先して外郭団体の民営化を進めた。時代の趨勢として、遅かれ早かれ民営化になっていたものが多いとも言われるが、橋下氏の強いリーダーシップがあったからこそ、このスピードで実現したと考えている府民・市民は少なくない。

伊丹・関空の経営統合を大きく促進

少し毛色は違うが、関空問題の処理(国営の伊丹空港と民営の関西空港の統合)も、橋下氏の間接的な功績を指摘する声もある。元々、国交省にあった構想ではあるが、当時民主党政権であったこともあり、当面、実現しないのではないか、と多くの関係者が考えていた。

ところが、(どこまで意図していたかどうかはともかく)「橋下氏が伊丹を廃止しろと騒いだ」ことにより、伊丹空港と関空の統合と運営権の処理がこのスピードで実現した、と言ってもそういい過ぎではない。伊丹と関空は2012年4月に統合した。現在のインバウンドの活況に果たしている役割を考えると、実は、橋下氏の最大の功績といっていいかもしれない。

もちろん、民営化や二重行政機能の統合の目玉事業については、なかなか思い通りに進まなかった面もある。ただ、橋下氏退任以降、橋下市長時代に止まっていた協議が、かなり進んできている面もある。たとえば「大阪府立大」と「大阪市立大学」の統合、食品などの安全性検査研究を行っている「府立公衆衛生研究所」「市立環境科学研究所」の統合が府議会・市議会で承認された。最大の課題ともいえる「大阪市営バス」「大阪市営地下鉄」の民営化については、まだ不透明な状況ではあるが、吉村新市長の柔軟な対応姿勢もあり、以前に比べれば協議は確実に進んでいる。

「これまでの大阪維新の大阪府政・市政への取り組み」=「プロセス評価」について、大阪府市自身が評価しているので、こちらを参照してほしい。大阪府市の立場からは、もちろん肯定的な評価がされているが、別の立場からは、批判的にとらえる意見も少なくない。現時点で誰もが納得する評価をだすことは難しいが、確実に1つ評価が一致することがある。それは、

「府と市は、何をやるにも一致団結して取り組んでいる」

ということである。長らく言われ続けてきた「大阪府市あわせ(不幸せ)」は、相当程度、解消されているといっていいのではないか。都構想を目指した大阪維新の会にとってみれば非常に皮肉なことだが、自民党大阪本部が言う「都構想でなくても、府と市が連携してやっていくことは可能だ」ということを大阪維新の会が実践して見せている。

プロセス評価に対して、「結果評価」については、どうか? 前述の報告書の中で『全国ワーストランキングを独占するなど悪化した大阪の経済・社会状況を変えていくことは、容易なことではない』という記述がある。現時点では、まだ、目を見張るような具体的な成果はまだ出ていない、ととらえていいだろう。

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