解雇は当たり前、ニッポン雇用の修羅場 “美談”は遠い昔の話

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総務省が10月末に発表した9月の完全失業率は、前月横ばいの4.2%。世界的に見れば依然として低水準だ。だが、厚生労働省が同日発表した9月の有効求人倍率は0.81倍と、3年2カ月ぶりに悪化へと転じた。主要産業の中で新規求人数が大きく落ち込んだのは製造業だ。

とりわけエコカー補助金の終了を見越した自動車など輸送用機械が前年同月比5割減と激減した。電機業界が総崩れの中、仮に自動車業界でも人員削減が行われる事態に陥れば、電機業界を遙かに超えるその裾野の広さも含め、雇用に与える影響は計り知れない。

休業手当の一部を助成する雇用調整助成金も「景気が持ち直している」(厚労省)として、緩和されていた支給基準が10月から厳格化された。みずほ総合研究所の試算では、09年次には助成金効果で失業率が最大1.4%抑制されている。

セーフティネットを緩めた矢先に、景気減速が表面化。歩を合わせるように、大手から中小まで、なし崩し的に解雇が自由化され始めた現実が、ビジネスパーソンに襲いかかる。もはや誰でも解雇、失業はひとごとでは済まされない。

(週刊東洋経済2012年11月17日号掲載記事を加筆)

風間 直樹 『週刊東洋経済』編集長

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かざま・なおき / Naoki Kazama

1977年長野県生まれ。早稲田大学政経学部卒、法学研究科修了後、2001年東洋経済新報社に入社。電機、金融担当を経て、雇用労働、社会保障問題等を取材。14年8月から17年1月まで朝日新聞記者(特別報道部、経済部)。復帰後は『週刊東洋経済』副編集長を経て、19年1月から調査報道部、同年10月より現職。著書に『雇用融解』(07年)、『融解連鎖』(10年)、電子書籍に『ユニクロ 疲弊する職場』(13年)など。

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