本格的復活は早くても5年後だ! 「日本化」する米国経済

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家計を改善させる柱は、なんと言っても雇用環境の大幅な改善ですが、政府の対策は大銀行や大企業を優遇するものばかりで、雇用の大部分を担う中小企業や地方経済の疲弊は著しく、とても明るい展望を描けそうにはありません。雇用環境改善の鍵を握っているのは、地方銀行を始めとする中小の銀行です。ところが、地方にある中小銀行は、住宅バブル崩壊以降、財務がまったく改善していません。

地方金融機関の経営不安は米国全体の雇用に影響

地方の中小銀行の多くは、いまだに商業用不動産融資の焦げ付きや不動産ローン担保証券の含み損で身動きが取れない状態に陥ったままです。全米のあちらこちらで、融資先のショッピングセンターが廃虚化してしまうというケースも珍しくありません。依然として、米国にある8000の地方金融機関のうち、800近くは健全性に問題があると言われています。

地方経済と不動産融資は密接に結びついているため、不動産バブル崩壊の影響は、地方に深刻な事態をもたらしているのです。地方金融機関の財務が悪化すれば、当然のことながら、中小企業への融資は減少します。

その結果、資金繰りを心配する中小企業は、人件費を含めたコスト削減に踏み切らざるをえません。米国では民間の雇用の7割を中小企業が担っていますから、地方金融機関の経営不安は、地方の雇用不安というよりも米国全体の雇用不安を生じさせることになっています。

日本のバブル崩壊後の歴史が示しているように、バランスシート不況が沈静化するためには、最低でも10年単位の時間が必要です。07年の住宅バブル崩壊から2012年はまだ5年目です。ということは、米国経済は、少なく見積もっても、あと5年は低迷が続くという見通しを立てざるを得ないのです。

 

中原 圭介 経営コンサルタント、経済アナリスト

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なかはら けいすけ / Keisuke Nakahara

経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。経済や経営だけでなく、歴史や哲学、自然科学など、幅広い視点から経済や消費の動向を分析しており、その予測の正確さには定評がある。「もっとも予測が当たる経済アナリスト」として評価が高く、ファンも多い。
主な著書に『AI×人口減少』『これから日本で起こること』(ともに東洋経済新報社)、『日本の国難』『お金の神様』(ともに講談社)、『ビジネスで使える経済予測入門』『シェール革命後の世界勢力図』(ともにダイヤモンド社)などがある。東洋経済オンラインで『中原圭介の未来予想図』、マネー現代で『経済ニュースの正しい読み方』、ヤフーで『経済の視点から日本の将来を考える』を好評連載中。公式サイトはこちら

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