事後レポ

選ばれる都市、横浜へ

横浜市経済局長
林 琢己
幕末の開港から国際都市として歩んできた横浜のビジネス拠点としての可能性を考える「横浜市外資系企業誘致セミナー」が3月、東京・千代田区で開かれた。羽田空港や新幹線の新横浜駅への交通アクセス、海外に開かれた街の歴史に培われた豊かな生活環境に関するPRビデオに続き、横浜市の林琢己・横浜市経済局長が開会あいさつ。国際会議やスポーツイベントの開催実績にも触れながら、「新たなビジネスチャンス、成長の舞台としての横浜の魅力を伝えたい」と述べた。

●主催 横浜市
●運営 東洋経済新報社

【基調講演】
直接投資先としての日本の魅力

東京大学大学院経済学研究科教授
伊藤 元重

政府の経済財政諮問会議議員の伊藤元重氏は、治験等の迅速化に伴い、海外医薬品メーカーからの研究投資が増えるなど、低調だった対日直接投資の変化に触れ「日本、外国企業の双方にとって、対日直接投資は今後、重要になるでしょう」と話し始めた。中国企業が、静岡県内の旅館・ホテルを買収し、静岡空港発着のLCCを利用する中国人観光客の集客に成功したことを例に「海外企業のノウハウと、日本の技術や労働力等を組み合わせれば、新たな付加価値を生み出すことを期待できます」と述べた。

「今は15~20年に1度の世界経済の転換点」と言う伊藤氏は、資金流入による新興国経済の成長が世界経済を牽引するパターンが変化したという認識を示し、先進国経済の不調の共通原因である少子高齢化などに対応する「課題解決先進国」型の経済の構築を主張。地球温暖化に関するパリ合意を踏まえて温室効果ガス大幅削減に取り組むなど、世界的課題の解決に先進することで「日本は外国企業にとって魅力的な場になるでしょう」と見通した。

距離が近く、質量が大きいほど引力が強く働くのと同様、互いの距離が近く、経済力が大きいほど、二国間の貿易は拡大するとした「グラビティ理論」を紹介した伊藤氏は「アジア太平洋地域各国の経済規模が大きくなれば、日本との経済関係も拡大し、日本の魅力はさらに増します。訪日観光客も大幅に増えるでしょう」とアジア大交流時代の到来を予測。最後に、国際線機能を拡大する政府の戦略で、利便性を増す羽田空港に近い横浜市に「日本を活用してグローバル戦略を推進しようという海外企業を呼び込むフロントランナーとしての活躍を期待します」とエールを送った。

【立地企業講演】
ダウ日本開発センター(横浜)が目指す
協働的イノベーション

ダウ・ケミカル日本
ダウ日本開発センター長
浦野 裕一

2014年に横浜市に移転したダウ日本開発センターの浦野裕一氏は「『協働的イノベーション』環境を求めて選定しました」と述べ、優れた交通アクセスによる、顧客企業やパートナー、海外拠点への移動の際の利便性向上をメリットに挙げた。米国の化学メーカーであるダウ・ケミカルは、世界35カ国に179拠点を展開、地球が抱えるさまざまな社会的課題解決に向けた研究開発を推進している。そのスタイルは、顧客企業やユーザー企業らのステークホルダー、日本の研究開発拠点従業員、ダウのグローバルチームの3者が連携した「コラボレーションによるイノベーション創出」を重視している。同社研究開発拠点は「Our Lab is Your Lab」の哲学を掲げ「我が社の研究所を自社の研究所のように使ってください」というメッセージを発信。

同センターに備えられたロボット高圧発泡機などを使って、生産確認をするために訪れる顧客メーカーも多いことから、アクセスの改善は好評だ。浦野氏は「従業員の通勤環境も良くなり、人材確保面のメリットも大きい。イノベーションをグローバルに発信していきたい」と意気込みを語った。

【立地企業講演】
グローバルサプライヤーとしての、日本顧客向け事業展開と、日本拠点について

テネコジャパン
代表取締役社長
下西 康晴

2013年に横浜市中区桜木町に本社を移転、14年には同市金沢区にテクニカルセンターを開設したテネコジャパンの下西康晴氏は、横浜市選定の理由等を説明した。

テネコは、自動車、ならびに船舶、産業用エンジン向けの排気管、排気ガス処理装置や、サスペンションのショックアブソーバなどのライドコントロール製品を供給する世界有数の部品メーカーで、12年には大阪工場を稼働させるなど日本でもビジネスを拡大している。下西氏は「多くの潜在顧客がいる日本での事業は、重要な成長領域。競合相手との競争力を高め、日系自動車メーカーや、船舶、産業用エンジンメーカーに対するシェアを伸ばすには、開発拠点整備を含めたテネコジャパンの能力向上が必須」と判断して、立地の検討を進めていた。その中で、横浜市は、空港や新幹線の駅に近く、外国人の住環境、通勤の利便性にも優れる、と評価。横浜市企業立地促進条例による支援も後押しになり「リーマンショック後に中断していた投資再開を決断できました」と振り返った。

人材確保や賃料などのコスト面でも高次元で満足できるとした下西氏は「オフィス、研究施設のリソースをフル活用し、地域社会にも貢献していきたい」と話した。

【市長プレゼンテーション】
横浜が選ばれる理由

横浜市
林 文子 市長

横浜市の林文子市長は「外資系企業のビジネス拡大に貢献できる優れた環境を持った都市」としての横浜市を強力にアピールした。同市は、人口約372万の巨大都市。参加者数の多い大規模国際会議に圧倒的な強みを持つ日本最大級のコンベンション施設「パシフィコ横浜」を備え、国から「グローバルMICE都市」に選ばれている。また「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」としては、横浜市立大学先端医科学研究センターのiPS細胞を使った臓器再生など革新的研究プロジェクトを推進。外資系IT企業の技術開発拠点をはじめ、外資系企業の本社、研究開発機関が、それぞれ約180社ずつ進出している。

選ばれる理由は、良好な交通アクセス、都内と比較してリーズナブルなオフィス賃料に加え、豊富な人材の集積がある。市内に立地・隣接する大学は29もあり、うち理工系大学・大学院は9校。全国に先駆けた待機児童対策など日本一女性が働きやすい都市を目指しており、女性社員確保にも有利だ。市内には計10の外国人学校があり、外国人の家族にも暮らしやすい環境が整っている。

横浜市の企業進出支援も見逃せない。事務所や施設を建設・取得する場合、5年間の固定資産税・都市計画税を2分の1軽減と、最大で投資額の12%、50億円の立地助成金を支給するほか、テナントでの本社機能立地企業に対し、従業員数や面積などに応じた助成も用意。外資系企業専門の総合案内窓口も設置する。林市長は「私自身も外資系日本法人のトップをはじめ10年にわたり経営に携わり、進出先選定にあたっての判断の厳しさを知っています。その経験から、皆様のビジネス環境に最適の地となるよう取り組んでまいります」と呼びかけた。

(講演者の肩書は開催日当時のものです)

お問い合わせ
横浜市 経済局 成長戦略推進部 誘致推進課
横浜市中区真砂町2-22
関内中央ビル5階
 045-671-2594
 http://www.city.yokohama.lg.jp/keizai/yuchi/
横浜市企業誘致ガイド