金属と電線の統合が映す日立製作所のあり方 ”御三家”の2社も合併へ

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同日、都内で会見した高橋秀明・日立電線社長は、経営統合に至った背景について、「高機能材料メーカーとして持続的成長を目指していくためには、経営資源の有効活用によって、事業効率を上げるとともに、事業領域の拡大、販売力の強化、顧客基盤の拡大を実現することが必要との認識に至った」と説明した。

藤井博行・日立金属社長は、「以前から統合の話は何度も出ており、個々のアイテムとして共同でできるところはやってきた」「今年の4月くらいから急速にマーケットが悪化し、それならば早く統合効果を出そうという決意に至った」と述べた。さらに、「(中期経営計画の見直しにあたって)最大の課題はグローバル。海外売上高比率50%を目指したときに、国内に何を残し、何を外へ持って行くか」として、経営統合を機に、国内外の販売拠点の統合などに踏み込む考えを示した。

2社と並んで、「日立御三家」と呼ばれる日立化成工業との関係については、「材料3社としては同じくくりだが、日立化成の製品と言われるとピンと来ないところがある。日立電線とであれば、すぐにでも統合できるという感じを持った。中身についてはこれから詰めていきたい」(藤井博行・日立金属社長)と語った。

日立グループ再編の流れ

特殊鋼と電線。近い業態の企業が手を組み相互の技術やノウハウを組み合わせることで競争力強化を狙う算段だが、これは日立製作所が従来から進めてきたグループ再編の流れに沿ったものだ。

日立製作所グループは広範に事業展開する反面、トップシェア製品がほとんどなく資源が分散。09年に総合路線の見直しを表明し、電力、鉄道、情報システムはじめ社会インフラをコアとする戦略にシフトした。09年度に上場子会社のうち5社を一挙吸収。今回は上場子会社で残っている御三家のうち、2社を合流させグループ全体の競争力を高めようという狙いであろう。

御三家の一角である日立化成工業も昨年、蓄電池などを手掛ける子会社で日立製作所からみると孫会社の新神戸電機を100%子会社化した。かつて多数の企業群で構成することで存在感を誇った日本屈指のコングロマリット(複合企業体)は、そのあり方を変えている。

小河 眞与 東洋経済 記者
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