眞露、日本足場に販路拡大へ 焼酎イメージを払拭

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縮小

消費者の誤解が成長のきっかけに

楊社長が好機だと考えたのには理由がある。日本の消費者を対象にした調査の結果が根拠となった。眞露がマッコリ事業を行う前に実施されたこの調査では、マッコリを知っている、あるいは飲んだことがあると回答した日本人が選んだブランド2位が「眞露マッコリ」だった。楊社長は「韓流ブームと眞露焼酎のおかげで、眞露はマッコリも造っているだろうと日本人が錯覚していた。出てもいない製品のブランドが認知度で2位になるほどであれば、十分に成功できると考えた」と打ち明ける。

10年に発売された眞露のマッコリは、予想どおり人気となった。10年の目標だった年間10万ケースの販売は2カ月で達成。11年には年間120万ケースを目標にし、これを上回った。同社は焼酎の流通網にビールとマッコリを相次いで流し、酒類の多様化に成功した。

日本の酒類市場は07年以降、5年間で6%ほど縮小している。しかし、眞露は同期間で売上高で239・61%に成長、堂々の総合酒類会社になった。楊社長は「市場全体が縮小する中で成長できたことは非常に例外。特に酒類の多様化に成功したことは自慢だ」と言う。また、「運がよかった」(楊社長)。韓流ブームで韓国料理への好感度も高まり、マッコリなど韓国の酒への関心も高まったためだ。

楊社長は金融マン出身。営業力が重要な酒類業界では、金融マン社長への不安もあったが、過去、銀行頭取出身者をCEOとしたアサヒビールがトップシェアになった事実が、彼には自信となった。結果として、彼の社長就任は成功ストーリーとなった。だが、楊社長は「眞露のブランドパワーは日本では強いが、しょせん外国ブランド。つねに緊張感を持って営業に最善を尽くすべき」と気を引き締める。

日本を戦場に、韓国の同業他社からの挑戦も厳しい。韓国焼酎メーカーが日本の大企業と手を結び、焼酎とマッコリを日本に輸出している。これに対し、楊社長は焼酎の多様化で反撃に出ている。「焼酎製造免許を持った10億円規模の日本の会社を探している」と打ち明ける。芋焼酎などを造ることができる乙類焼酎免許やほかの材料を添加できる混合焼酎免許を得るためだ。

楊社長は海外営業にも本腰を入れる。現在、米国や豪州、モンゴル、タイ、ミャンマーなど世界60カ国ほどに74の製品を輸出している。最近はベトナムがメインターゲットだ。中国では自社流通網を経由して順調に市場を攻略中。独走状態にあるロシアでは、焼酎を「低い度数のウオツカ」として広報し、販売している。楊社長は「17年までに売り上げ全体に占める輸出の割合を18%(3000億ウォン、1ウォン=約0・07円)に引き上げる」と自信を見せる。

(韓国『中央日報エコノミスト』10月15日号/パク・サンジュ記者 =週刊東洋経済2012年11月17日号)
記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

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