激動の時代の闘い方を知らないリーダーしか担げない「不幸」

激動の時代の闘い方を知らないリーダーしか担げない「不幸」

塩田潮

 福田首相は4月9日の党首討論で、昨秋以来の小沢民主党代表との「左手で握手、右手で殴り合い」という不可思議な関係の清算を表明した。
 「闘う首相」へ方向転換を決めたのは3月下旬で、第1弾が27日の道路特定財源の来年度からの全額一般財源化宣言だった。苦しまぎれの窮余の策の対決路線選択だが、首相は支持率回復に活用する作戦のようだ。小泉流の「抵抗勢力と闘う首相」を演出する一方、野党の同意や与党の承認が要らない外交で得点を稼ぐ戦法である。

 「闘う首相」の第2弾は憲法上の「60日ルール」の多発による滞留法案の成立だ。「60日」確保に必要な国会延長も視野に入れる。第3弾は霞が関の反対が根強い公務員制度改革で推進姿勢を明確にする計画ではないか。だが、仮に狙いどおり支持率が上向いたとしても、政権の安定化にはほど遠い。どうしても必要なのは参議院での多数だから、大連立が不可能なら、民主党分断の中連立、それも無理なら20人程度の参議院議員の野党離脱による小連立を策する。サミットの前とも直後ともいわれている内閣改造で新連立内閣をつくってねじれを解消する。

 と、まあ、こんなシナリオのようだが、展望は暗い。「闘う首相」の演出も小連立の仕掛けも、周囲に手足となって動く仕事師が必要だが、人材が見当たらない。それ以上に「闘う首相」を目指す首相本人に闘い方のノウハウの蓄積がない。安倍前首相も福田首相も、議員歴は20年足らず、派閥争奪の経験もなし、総裁選も一発勝利で、権力闘争らしい権力闘争はやらずに頂点に到達した。闘い方を知らない福田首相は安倍前首相と同じように放り投げ辞任に走る可能性が消えない。
 ねじれ出現による「激戦の時代」に闘い方を知らないリーダーしか担げない自民党の人材難が政権迷走の隠れた要因ではないか。
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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