中堅業者が破綻 ブーム終焉のマンション市況

販売価格高騰で購買層の購入意欲が冷え込んだところに改正建築基準法が追い打ち。マンション販売は長きにわたる空前のブームが終焉。業界は淘汰のとば口に立っている。(『週刊東洋経済』12月22日号より)

 長くブームを謳歌してきたマンション販売だが、ここに来てその変調ぶりが鮮明になってきた。

 12月10日、横浜市中区にある中堅業者、グレイスの本社は朝からシャッターが下りたまま。のぞき込むと、「本日臨時休業」との告知がガラスドアに張り出されていた。社員が全員解雇されたとの情報も伝わるが、臨時雇いの警備員に聞いても「何もわからない」という。「第1回の不渡りを出しました。今後の金策について鋭意努力中ですが、残念ながらメドは立っておりません」。本社に電話をかけると、このような録音メッセージが聞こえてくるだけだ。

 1985年に設立された同社は「サングレイス」ブランドのマンションを神奈川県中心に販売してきた。ピークの2004年12月期には136億円の売上高を計上したが、ここ2年は減収続き。純利益が1億円に満たないという低収益体質だったため、売れ残り在庫を抱え、あっという間に力尽きた。

来年は5万戸台に急減

 マンション市況の減速感が際立つようになったのは今年の夏ごろからだ。背景の一つとして挙げられるのが、販売価格の高騰による需要の冷え込み。不動産経済研究所によると、首都圏マンションの平均価格は一昨年に4108万円だったものが今年1~10月には4674万円まで上昇した。これは1992年以降で最高の水準である。 各業者は競うように、用地価格や建築費の上昇を織り込んだ高めの価格設定を行い、「新価格」や「新々価格」と称して強気の販売姿勢をとってきた。一般にマンションの最適購入価格は「年収の5倍」。東京23区内で年収700万円に適した一定の広さの物件を探すと、「数年前なら供給戸数の10%以上はあったが、今は5%しかない」(福田秋生不動産経済研究所・企画調査部長)とされる。そうした急激な価格上昇に消費者がついていけなくなったのが今の構図というわけだ。

 また、ベンチャー経営者など“株長者”の大盤振る舞いによりこれまで絶好調だった都心物件も、株式市況が不調なことなどを受け、選別色が強まりだしているという。

 これらに追い打ちをかけたのが改正建築基準法の施行だ。構造計算書の審査が厳格化されたことで、審査スピードが大幅に遅れている。国土交通省発表の新設住宅着工戸数は7月から10月まで4カ月連続で前年割れ。業界では「審査期間が従前の21日から70日に延びると聞いたが、それ以上に日数がかかっている」との声も聞かれる。 このためマンション市況は一気にしぼむことが確実な情勢だ。住宅ローン減税の大幅拡充などにより首都圏の供給戸数は99年以降、8万戸台という空前の高水準を維持し続けた。しかし、前出の福田部長によると「今年は6万戸台。来年は5万戸台もありうる」と言う。かつてない長期のブームが、主力購買層である団塊ジュニアの需要を先食いした可能性が高いのも、悲観的な予測の背景にはある。

 改正建築基準法による追い打ちは、実際に企業業績にも影響を与え始めた。賃貸アパート建設の東建コーポレーションは、08年4月期の利益予想を期初計画に比べ半減させる下方修正を発表した。同社の取扱商品の60%は審査対象の重量鉄骨系アパート・マンション。審査遅れによる期ズレが収益を直撃した格好だ。今後、マンション専業でも、同様に下方修正に見舞われるところが出てきそうだ。

 「長く続いたマンションブームも07年で終わり」(不動産評価に詳しいトータルブレインの久光龍彦社長)との見方はますます強まっている。冒頭の中堅業者の破綻は、業界淘汰の始まりなのかもしれない。

(書き手:日暮良一、高橋篤史)

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