東芝「極めてホワイトな新社長」で起死回生? 医療事業を予想以上の高値で売却した救世主

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新社長に就く綱川氏。今後どれだけの難題が待ち受けているのだろうか

不正会計で揺れた総合電機大手・重電大手の東芝が、ゴールデンウィークの谷間の5月6日に社長人事を発表した。

6月下旬の定時株主総会終了後の取締役会で、指名委員会の小林喜光委員長(東芝社外取締役・三菱ケミカルホールディングス会長・経済同友会代表幹事)が、綱川智(つなかわ・さとし)取締役・代表執行役副社長を同社長に、志賀重範(しが・しげのり)代表執行役副社長を同会長に、それぞれ選定することを提案する。不正会計の発覚で昨夏に急遽就任した室町正志社長は取締役を外れ、特別顧問に就任する。

綱川新社長は1955年9月生まれの60歳。東京大学教養学部を卒業後に東芝に入社。以後、医療用機器畑を歩んだ。米国など海外での勤務経験が長い(計15年)。不正会計に関与していないホワイトな人物であること、事業構造改革に一定のメドをつけた実行力、柔軟な発想力を持っていること、MRI(磁気共鳴画像)検査装置などの医療用機器を大きく育てあげたことが、社長就任の決め手となった。

東芝は、医療機器を手掛ける東芝メディカルシステムズを3月中旬にSPC(特別目的会社)に売却。その代金6655億円はキヤノンが払い込み済みだ。交渉を主導したのが綱川新社長である。3000億~5000億円と言われていた売却額を大幅に上回り、東芝は債務超過の危機を脱しつつある。

新社長のミッションは「資金集め」

会見で綱川新社長は「財務基盤の改善が最優先事項」と何度も強調。17%台だったのがわずか1年で5%台にまで落ち込んだ株主資本比率の向上のために、資金集めに奔走するのが最初の仕事となりそうだ。

資金集めには、成長シナリオを説得力を持って話すことが不可欠だ。日立製作所がかつて製造業最大の赤字を計上した直後に行ったように、資金集めのために綱川新社長は国内外を行脚することになるだろう。

指名委員会は昨年9月30日の発足後、5月6日までに11回開催され、うち8回は社長人事を協議した。それとは別に、「社内で10人ほどの候補者」(小林委員長)と個人面談を積み重ねてきた。

そして、新生・東芝の成長シナリオを説得力を持って語れる人物は、3月に発表した事業計画をまとめた綱川氏しかいないとの結論に至った。指名委員会は6日午前に決定、ただちに綱川氏に伝え、綱川氏の受諾を受けて取締役会で協議。緊急会見を同日午後5時に開催した。会見には室町氏、小林氏、綱川氏、志賀氏が登壇した。

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