どうなる「財政の崖」 オバマ大統領が再選 

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期限延長が次善策

一方、オバマ大統領が共和党に譲歩するかも未知数で、当面は両党による我慢比べになる可能性が高い。

金融アナリストの多くは次善策として、新議会が始まるまで続く現在の「レームダック議会」が、財政の崖が起こるのを数カ月後ろ倒しする案を打ち出すのではないかと見ている。この延長策がなければ、1月にはブッシュ減税の期限切れで大幅増税となるほか、国防費など強制的な歳出削減が行われ、2013年中に国内総生産(GDP)の5%に当たる債務削減が実施される。連邦議会予算事務局はこれにより、13年前半のGDPは3%のマイナス成長になると予想している。

危機的状況が迫る中、両党は今回の選挙の意味を考えるべきだ。オバマ大統領はこれまで十分共和党に歩み寄ってきたと考えているようだが、はたして今後自らの案を共和党に押し付けることができるのだろうか。

共和党は今回敗北した理由を考えなければならない。議事妨害や保守的すぎることが敗因と考える議員がいる一方、ロムニー氏が保守的でなさすぎた、と考える議員もいるだろう。今回当選しながらも茶会系議員の台頭におびえる議員の中では、議事妨害が敗因と考える向きが多いようである。

仮に財政の崖が避けられたとしても、オバマ大統領には景気回復を加速するためのさらなる施策を仕掛けられるほど強い権限はない。忘れてならないのは、今議論されているのは赤字削減策であって、雇用創出策ではないことだ。オバマ大統領が望んでいるのは、景気が自力回復し、その功績を認められることなのである。

撮影:ロイター/アフロ =週刊東洋経済2012年11月17日号)
記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

リチャード・カッツ 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Richard Katz

カーネギーカウンシルのシニアフェロー。フォーリン・アフェアーズ、フィナンシャル・タイムズなどにも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。目下、日本の中小企業の生産性向上に関する書籍を執筆中。

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