特別企画:ミドルリーダー座談会(上) 高度な思考・コミュニケーションとは

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一度で理解が噛み合うこともあれば、まるで噛み合わず、自分が書いた言葉尻を捉えて指摘を受ける時もあります(笑)。けれど、そういうやりとりを通して、本当の意味での「あ、分かりました」となっていくわけです。先ほど藤井さんも言われましたが、これは、やはりコミュニケーションだなと思います。ただ、私がそこでいつも意識するのは、自分でも一度まとめたうえで再度アウトプットして、それを見てもらうという部分です。それによって思考範囲を整えていくのはすごく大事な作業になりますので。

そして同じことを、部下にもさせています。自分が言ったことを、彼・彼女なりの整理でアウトプットの形にして持ってきてもらうのです。これにより、全体として進む方向もピタリと定まりますし、やりとりを重ねるうちに目線も多少は合ってくると感じています。

意外に便利な「と、言いますと?」という言い回し

井手:戸津さんの話を伺っていて、前職でプロダクト企画を担当していたときのことを思い出しました。企画担当者は、新商品や新サービスのコンセプトメイクから、実際にモノを作り、販売企画を立て、サポート体制まで構築するという、一気通貫での責任を担うのですが、検討開始当初は、企画側から関連各部に対して、一方的にサービスコンセプトを説明していきます。

そのうち、関連各部から戸津さんが言われたような「こう解釈しました」という書類が出てくるのです。その内容を見て、初めて関連各部がどれだけ内容を理解してくれているか、を把握することできます。

たとえばコールセンターであれば「こういう問い合わせに、こう答えます」とか、営業であれば「このような販促物で訴求していきます」とか。場合によっては「やりたいことは分かるけれど、物理的に難しい・・・」ということも多いのですが、これらは企画のコンセプトを関連各部が自らのお題として受取った瞬間です。こういうやり取りを深めていくことで、より良いプロダクトが完成するのです。

私自身、上司の立場の時は、「こんな解釈ですけれども良いですか」というコミュニケーションは歓迎していました。一方で部下の立場であれは、「お前、分かってないな」と思われないようにしつつ、上司との理解を深めるコミュニケーションを行うよう意識していました。

個人的に好きな言い回しとして、「と、言いますと?」というのがあってですね(一同笑)。「こんなことやろう」と上司に唐突に言われた際に、「どうしてですか?」と言ってしまうと、「それぐらい理解しろよ」なんていうやりとりになってしまう。そのため、「なるほど。えーと、これってどういうことですかね。。。」といったニュアンスで質問していくと・・・

荒木:相手が勝手に、興が乗って喋る、と(笑)。

井手:そうなのです。「ということは、どの辺りをターゲットに置くのですかね」なんて聞いていきます。つまり、その人が思い付いたアイデアに関して、その人の脳を回転させるのです。

その回転させる方向性が、まさに先ほど出てきた「フレームワーク」です。「ということは、競合は社長のなかではどのあたりを考えているのでしょうか?」と聞いてみたり(一同笑)、「新たな物流体制が必要という感じでしょうか・・・」といった、バリューチェーンについて思考を促してみたり。

戸津:私もよく「どの辺を今はイメージしていらっしゃいますか?」とか言いますね(一同笑)。

井手:そんな感じです(笑)。この際、経営の常道や、幾つかのフレームワークに沿って質問をしていけば、上司としても「あ、全体像を持って聞いてくれているな」と感じてくれますし、「上司の頭の中の整理」も促すことができます。

戸津:自分にもスムーズにインストールされてきますよね。自分の枠のなかに相手の情報を詰め込んでいくわけですから。

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