コマツ、慎重な減益予想の裏に将来への自信 建機市場"ゼロ成長"でも、攻めの姿勢貫く

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今期、会社側が前提としている平均為替レートは、1ドル=105円(前期実績は120.8円)。対ドルで1円円高になるだけで約25億円の減益要因となり、建機事業の減益要因の大半をこの円高が占める。前期は唯一増収だった北米も、今期は逆に最大の減収要因に転じてしまう。

日本銀行が4月28日の金融政策決定会合で、追加の金融緩和を見送ったことで一時1ドル=105円台まで円高が進行。為替に関してはバッファがなくなってきた。

会社予想ほど悪くはならない?

が、建機市場については、「コマツの予想は保守的」との見方もある。今期の中国市場の需要について、同社は前期比20~25%減と厳しく見積もっている。中国政府の政策次第ではあるものの、上振れる可能性は残されている。

日本国内の需要についても会社側は10%前後の続落を見込む。ただ、東京五輪需要の顕在化に加え、地震で被災した熊本の復興需要なども上乗せされれば、状況が変わってくる可能性はある。

とはいえコマツはあくまで慎重な前提にこだわる。決算と同日に発表した2019年3月期までの新中期経営計画でも、今後3年間の建機市場全体は“ゼロ成長"を基本とした。

市場の停滞に今後どう対応していくのか。大橋社長は「スマートコンストラクション(情報化施工、無人化運転)などを通じて業界水準を上回る成長を狙う」とする。明確な数値目標こそ出さなかったが、その口ぶりや表情には、アジア断トツであることの自負と、さらなるシェア拡大への意欲が感じられた。

研究開発費も今期は725億円と、前期から18億円増の高水準を維持。イノベーションによる競争力確保には余念がない。今は次なる成長へ向けた雌伏期といえる。

「週刊東洋経済」5月14日号<9日発売>「ニュース最前線05」を転載)

中村 稔 東洋経済 編集委員
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