「コンテンツではなく娯楽」 新世代リーダー 川村元気 映画プロデューサー(下)

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——恋愛についてはどうでしょう?『悪人』は恋愛がテーマですか? 

善悪ですね。

——『電車男』は恋愛ですか?

『電車男』は実は恋愛ではなくて、「人は顔の見えない人とつながれるか」という、ソーシャルネットワークの話です。

オタクが美女と恋愛を実らせることに本質はなくて、恋愛をしたことがない主人公のために、ネットの人たちが本気で応援したということが面白いんです。つまり、ネットの中に本物の友情が生まれた。しかも実話。昔だったら、その男が頼ったのは、先輩や父親だったりしたのに、ネットの人たちだったというのが、画期的だったと僕は思っています。

この作品には、ハリウッドのリメーク依頼も多いんですが、みんな、そのポイントを指摘しますね。

——『モテキ』は恋愛ですよね?

モロ恋愛ですね。人は誰もが墓までもっていきたい、みじめな恋愛を一度はしているはず。他人にはしゃべっていないけど、実はみんなの心にある恋愛の姿を映画でやりたかった。人は恋愛では成長できない、そして恋愛はみじめだ。でも恋愛っていいよね、というのが『モテキ』です。

——今回の小説では、昔の恋人が出てきたりしましたけど、あんまり恋愛の話はなかったですね。

そうですね。自分の余命が短いことがわかったら、とりあえず「初恋の人どうしているのかな?」と一瞬気になったりするじゃないですか。でも、いざ会いに行くと、向こうからすると昔の男の死とかって、どうでもいいんだろうなと思うんです。女の人は昔の男に対してドライですから。

恋愛ってほぼ後悔だらけ、というか、ほぼ全部失敗するわけです。「あの時あんなこと言わなきゃよかったのに」とか、「あのときなんでああいうふうに言ったのか……」みたいなことばかりが思い出になっていく。

でも、僕は自分が死ぬとなったときに、そういうガラクタになっているようなものをもう一回引き寄せたくなるんじゃないかと思ったんです。長く連絡を取ってない親友とか、「痛かったなー、あの恋愛」とか。

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