「文字が消せるコピー機」開発の裏側 東芝テックが来年発売へ

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まず開発チームはフリクションを400本買い集め、インクを抜き取ってトナーを試作した。しかし、フリクションは、摩擦熱によって60度で文字が消える特性がある。通常のコピー機は150~180度でトナーを紙にくっつけるため、印刷時に色が消えてしまうという難問にぶつかってしまった。「もっとも苦労したのは低温定着の技術」(東芝テックの技術統括部・中村鐵也部長)というように、定着温度を大幅に引き下げることで製品化にこぎつけることができた。

画期的なシステムを実現したが、課題は数多い。まず今回のコピー機は、青色のみの出力となる。消える書類と消えない書類を一目で分別できるためとするが、青色に不自由を感じる人は少なくないだろう。今後はトナーの多色化に加え、いずれカラー化も考えているとするが時期は未定となっている。

印刷費増を再利用でカバー

肝心の印刷コストについては、1枚当たりの印刷費用は通常のモノクロ印刷と比べると5%程度の負担増になる。しかし紙の再利用が可能になることで、トータルでみるとコスト削減につながる。複合機は1台111万円、専用消色装置は1台30万台で、初年度5000セットの販売を見込み、今後3年で3万セットの販売計画を掲げる。

国内では官公庁や金融、製造業といった紙を大量に使用する業界に売り込む。海外では、「環境意識の高い大手流通企業の顧客にも提案していく」(東芝テックの鈴木護社長)。当社は今年7月に総額680億円を投じて、米IBMのPOS事業を買収したばかり。この顧客網も活用し、売り込んでいく戦略だ。

当社の市場シェアは、直近で国内3%、海外7~9%と存在感はいまひとつ。市場が頭打ちの中でも、今回の新システム投入で14年にかけて現行から5%増の成長を目指している。

前田 佳子 東洋経済 記者

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まえだ よしこ / Yoshiko Maeda

会社四季報センター記者

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