Yahoo!ショッピング、「爆走」はまだ続くのか 期待の事業、収益貢献はいかに…

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販促費は、2015年度にヤフー全体で460億円を投じたのを、来期は300億円台後半の水準に抑える見通しだ。当然、ショッピング事業に関しても投資額は減少する。宮坂社長は「昨年、色々なプロモーションを行い、どのような手法が効果的かを学べたので、昨年ほどの費用をかけなくても良いはず」と説明する。

とはいえ、顧客の新規獲得と囲い込みに効果的な施策を削減する背景には、販促費の原資となったアスクル連結による再評価益が今年度はなくなる、という懐事情も絡んでいるはずだ。

Yahoo!ショッピングの躍進は、大量のポイント付与に惹き付けられた利用者によって支えられているという指摘もある。そうだとすれば、ポイント付与の引き締めで、囲い込みが十分でない利用者が離れていくリスクは小さくないだろう。

ポイントでユーザーを獲得したわけではない?

こうした見方に対し、宮坂社長は「ポイントキャンペーンを行っていることも成功の大きな要因だが、より本質的には商品数の増加や買い物のしやすさなどの改善を進めてきたことが理由だ」と反論する。その主張通りに、サービス自体の求心力が高まっているかどうかは、今年度に答えが出ることになるだろう。

大幅増益になったものの、アスクル連結による効果が大きかったヤフー。宮坂社長は再成長への道筋を示せるのか(記者撮影)

また、中長期的に収益インパクトを与えられる事業となるのかどうかもYahoo!ショッピングの大きな課題だ。

出店するEC事業者の手数料などを無料にして取引の活性化を狙っており、収益モデルは広告の一本足。ショッピング広告の売り上げは前年度比で倍増し81億円となったが、ヤフー全体の売上高からすれば1%程度だ。先行投資を続けているため、損益面でも「大きな赤字になっている」(財務担当の大矢俊樹副社長)。

大矢副社長はYahoo!ショッピングについて、「遅くとも2017年度には黒字にできる」との見通しを示した。しかし、求められているのは、単なる黒字化ではなく、ヤフー全体の収益性を高められる事業にすることのはずだ。全体の成長が頭打ちになっている中で、Yahoo!ショッピングを新たな成長ドライバーにすることができるのか。宮坂社長を始めとする経営陣の手腕が問われている。

山田 泰弘 東洋経済 記者

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やまだ やすひろ / Yasuhiro Yamada

新聞社の支局と経済、文化、社会部勤務を経て、2014年に東洋経済新報社入社。IT・Web関連業界を担当後、2016年10月に東洋経済オンライン編集部、2017年10月から会社四季報オンライン編集部。デジタル時代におけるメディアの変容と今後のあり方に関心がある。アメリカ文学、ブラジル音楽などを愛好

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