イスラエル胎盤細胞ベンチャー上陸の舞台裏 再生医療の法改正で海外企業が日本を目指す

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イスラエルのバイオベンチャー、プルリステムは胎盤細胞を使った再生医療製品を日本で開発する予定

再生医療製品を日本で開発しようという機運が高まっている。2014年秋に法改正が行われ、再生医療製品がスピーディーに承認されるようになったためだ。水面下で数々の動きがある中、イスラエルのバイオベンチャー、プルリステム・セラピューティクスは、早くも日本での開発を表明した1社だ。

来日したプルリステムのザミ・アバーマンCEOは、「法改正はワンダフル(すばらしい)。新しい治療を患者さんに早く届けられる。日本は再生医療でリーダーになれると思う」と話す。「日本は世界で2番目に大きな医薬品市場。欧米で開発しているわれわれが次に日本へ進出するのは自然な流れ。また、日本人の医療に対する考え方は、西洋の一面的な見方と違って多面的。国として再生医療に注力しているのはその表れで、われわれもこの市場にぜひ参加したいと思った」(アバーマンCEO)。

胎盤にはさまざまな治療効果を期待できる

再生医療と聞くと、日本ではiPS細胞(人工多能性幹細胞)を思い浮かべる人が多いが、実際に再生医療で使われる細胞は多岐にわたる。プルリステムは、ヒトの胎盤の細胞を使った製品を作るというユニークなアプローチを取っている。胎盤とは、妊婦のお腹の中で、胎児と母親とを連絡する、ホットケーキのような形の組織。通常は医療廃棄物として、出産後に捨てられてしまうが、回収して治療効果を持つように処理することで、胎盤1つで1万人の治療ができるという。

アバーマンCEOは「胎盤は生命の源。10年前に胎盤の研究を始めた頃、胎盤は『プラセンタ(英語で胎盤の意味)』としてクリームなどの化粧品にしか使われていなかった。だが研究を進めるにつれ、胎盤にはいろんな細胞が含まれていて、さまざまな治療効果を期待できることがわかった」と説明する。

実際、2015年には米国立衛生研究所(NIH)が、妊娠中の胎盤を研究する「ヒト胎盤プロジェクト」へ、4150万ドル(約45億円)の支援を決定。血液がんに強い米バイオ製薬会社のセルジーンも胎盤の研究に取り組むなど、近年胎盤への注目度は高まっている。

胎盤細胞には、自然治癒力を高める働きがあるとされる。再生医療には組織や臓器そのものを作って、損傷した部分を置き換えるというアプローチもあるが、プルリステムの開発品は、胎盤細胞を注射し、細胞が分泌するタンパク質を通じて治療を行うというメカニズムだ。

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