住友商事がJ:COM非上場化のナゼ 狙いは配当の山分け

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3番目が、「経営に変なノイズを入れたくない。2社でスッキリしたかった」(大澤専務)。これは少し説得力がある。全体的にカネ余りで、米国の通信会社を買収する人もいれば、それに喜んで融資する銀行もある。上場したままではどこからちょっかいが入るかわからない。KDDIによるJ:COM株購入でかつて苦杯をなめた住友商事としては、切実な問題だ。

配当が増えなければうまみはない

ただ、ノイズ排除と同等あるいはそれ以上の理由は、カネ、つまり配当である。持ち分利益の取り込みは会計上の利益で、配当が増えなければ腹は膨れない。大澤専務は「配当をしっかり取っていくということでKDDIとも一致している。配当性向50%は最低だろう」と明言する。

J:COMの今期の配当性向予想は44%で、2年前に費やしたTOB資金に対する利回りは5.6%。また、J:COMからの配当金累計は5年で209億円になる。しかし、それまでの投入資源を考えるとこの回収ペースでは満足できまい。配当性向が6%ポイント上がって50%になったところで同じだろう。

仮に今回の再編にかかる新規借り入れ2500億円を10年で返済するとしてみる。

J:COMのフリーキャッシュフロー700億円に、買収するJCNのフリーキャッシュフロー「100億~200億円」(大澤専務)の下限100億円を足すと800億円になる。11年12月期の財務CFの主な支出は長期借入金元本返済197億円、リース元本返済208億円であり、これに新規借り入れ返済分を加えて差し引くと、非上場化後のJ:COMの配当可能額は145億円で、今期予想の配当金総額172億円を下回る。

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