首都圏マンション販売、大手と中堅で明暗 好立地の確保がカギ

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一方、中堅以下のデベロッパーが供給した155物件では、「好調」が37物件(23.9%)にとどまったのに対し、「まずまず」が70物件(45.2%)、「苦戦」が48物件(31.0%)と、「まずまず」以下が7割を超えた。 

大手と中堅以下で売れ行きに差が生じた要因として、トータルブレインは次のように分析している。

坪単価200万円台前半のマンションの主な購入層は、住宅を初めて購入する「1次取得者」の中でも比較的収入が高い層だ。こうした顧客層は予算的に余裕があるため、購入を検討する際の比較対象物件の幅も広く、それだけに選別条件も厳しくなる。そのため、多少価格が安くとも、立地条件がいまひとつの物件に関しては、比較対象から外されてしまう。そんな彼らのお眼鏡にかなう好立地の用地を取得できるのは、資金面や情報量で勝る大手が中心となってしまう、というわけだ。

城東エリアで「立地」の差が鮮明

こうした立地重視の状況が如実に表れているのが、城東エリア(江東、墨田、台東、江戸川、葛飾の5区)だ。11年1月~12年8月の間に51物件が供給されたが、「好調」と答えたのは14物件(27.5%)にとどまる。

このうち、実に12物件が売れ行き好調の要因を「立地」と回答した。エリア内での200万円台前半の供給戸数が10年前に比べて倍以上に膨らむ中で、需給バランスが崩れ始めており、「駅から近い順に売れていく」(杉原常務)状況だという。逆に、幹線道路や線路に近いなどのネックを少しでも抱えた物件は、近隣に競合物件が多い分、ほかのエリア以上に苦戦を強いられているようだ。

(撮影:ヒダキ トモコ)

猪澤 顕明 会社四季報オンライン 編集長

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いざわ たかあき / Takaaki Izawa

1979年生まれ。慶應義塾大学卒業後、テレビ局勤務を経て、2006年に東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、ニュース編集部などに在籍。2017年国内のFinTechベンチャーへ移り、経済系Webメディアの編集長として月間PVを就任1年で当初の7倍超に伸ばす。2020年に東洋経済へ復帰、「会社四季報オンライン」編集長に就任。

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