なぜ今、ビジネスマンに仏教が必要か 僧侶がMBAを取ったワケ

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そんなふうにいろいろやって参りましたが、どの取り組みも、「お寺の未来をどうすればよいか」というところから始まっています。そこで、2010年にこれまでやってきたことの整理と今後のビジョン作りをしたいと思い、MBAを取りにインドへ留学しました。

インドでは、お寺にいちばん関係がありそうな、マーケティングとストラテジーを専攻しました。毎回、講義に出るたびに「この戦略フレームワークはお寺の運営にどう役立てられるだろうか?」と考えながら、マネジメントを学んできました。そうしてあらためて見えてきたのが、現代におけるお寺の役割とこれからの姿です。

これからのお寺の姿とは

代々受け継がれてきた歴史や文化を守り、次の世代へとつなげる。日本の社会においてこれまでお寺は、歴史を守る場としての自覚はあれど、未来を創る場としての自覚は薄かったかもしれません。ですが、その歴史や文化に目を向ければ、お寺ほど息長く続く場・組織は、他にありません。

言いかえれば、過去から現在、そして未来へと連綿と続く歴史や文化の軸となり、未来を創る場としての可能性が、お寺には秘められています。現代の人の「こころ」を支えるコミュニティの場へと進化すれば、日本ももっと元気になるに違いありません。

さて、長々と自己紹介を行い、失礼しましたが、このように「みんなと共に未来のお寺を創る」という私の仕事を支えてくれているのが、ほかでもない仏教です。人生の苦しみを解決する道として開かれた仏教ですが、仕事も当然人生の一部、それもかなり重要な一部ですから、そこに仏教が活きないはずはありません。

いよいよ次回からMBA坊主として「仕事に活きる仏教」をご紹介していきます。


 

松本 紹圭 光明寺 僧侶

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まつもと しょうけい / syoukei matsumoto

1979年北海道生まれ。本名、圭介。浄土真宗本願寺派光明寺僧侶。蓮花寺佛教研究所研究員。東京大学文学部哲学科卒業。超宗派仏教徒のウェブサイト『彼岸寺』(higan.net)を設立し、お寺の音楽会『誰そ彼』や、お寺カフェ『神谷町オープンテラス』を運営。

ブルータス「真似のできない仕事術」、Tokyo Source「東京発、未来を面白くするクリエイター、31人」に取り上げられるなど、仏教界のトップランナーとして注目される。2010年、南インドのIndian School of BusinessでMBA取得。現在は東京光明寺(komyo.net)に活動の拠点を置く。2012年、若手住職向けにお寺の経営を指南する「未来の住職塾」を開講。全国各地で各宗派から意識の高い若手僧侶数十名が「お寺から日本を元気にする」志のもとに集結し、学びを深めている。

著書に『おぼうさん、はじめました。』(ダイヤモンド社)『"こころの静寂"を手に入れる37の方法』(すばる舎)『お坊さん革命』(講談社プラスアルファ新書)『お坊さんが教えるこころが整う掃除の本』(ディスカヴァー21社)『脱「臆病」入門』(すばる舎)など。
 

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