マツダが販売好調の中で露呈したアキレス腱 国内工場はフル稼働、海外拠点の活用が急務

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北米に投入予定の「CX-9」(記者撮影)

特に「CX-5」は発売から4年が経過したが、2015年に実施した商品改良が功を奏し、世界販売は約37万台と高水準を維持している。マツダは近く3列シートの旗艦モデル「CX-9」の新型車を北米に投入する計画で、広島の本社工場で生産を開始している。また、新世代商品群の最新モデル「CX-4」を2016年6月に中国向けに現地生産で発売する。

高需要に対応して今期は年間で7万台ほどCX系を増産するが、それでも「CX系の生産能力の拡大が需要のピッチに追いついていない」(藤本哲也常務執行役員)のが実情だ。

販売台数は引き続き伸ばす

その要因は国内の「CX系」の生産能力に制約があるからだ。たとえば、広島の本社工場やタイ工場では「CX-3」を生産できるが、セダン系がメインの山口の防府工場では生産できなかった。「CX-3」は2015年度世界で12万台を売る好調ぶりで、2016年度後半に防府工場でも輸出向けの一部を生産できるようにする。

本社工場の負荷が下がった分は、「CX-5」や「CX-9」の生産に振り向ける考えだ。防府工場で「CX-3」の生産が増えると、「アクセラ」などセダン系の生産はメキシコに振り向ける計画で、結果としてメキシコ工場の稼働率を高めることに繋がる。こうして世界の生産拠点を車種ごとにバランス良く使い、全体で収益性を高めていく計画だ。

マツダは今期から新中期経営計画に入り、最終年度の2019年3月期には約12万台増の165万台の世界販売を目指す。中計のテーマとして掲げる「質的成長とブランド価値向上」をどう具現化するか、円高や新興国の景気低迷など逆風が吹く中で挑戦が続く。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年10月から東洋経済編集部でニュースや特集の編集を担当。

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